はてなの編集って、こんな人

こんにちは、はてなで編集兼プランナーの仕事をしている、田坂です。

僕は2016年2月からはてなにジョインしているのですが、いまだに「はてな」について、分からないことがたくさんあります。

もちろん、はてなの編集の業務や仕事については、現場で経験を積んだり、「はてなの編集は、こんなことをしています。 - はてな編集部ブログ「編む庭」」を何回も読んでいるので理解していますが、「はてなの編集者って何を考えて編集しているのか?」については、正直まだ分かっていないことが多いです。

そんな若輩者の僕が、勤務歴2年・5年・6年の先輩3人に「はてなの編集」について聞いてみました。

写真左下から時計回りで、毛利、田坂(インタビュアー)、青木、野瀬

はてなの編集は、リアルな体験が好き

——それでは早速、軽い自己紹介と「最近気になるコンテンツ」について教えてください。

青木:京都オフィスで「はてなニュース」の記事作成と「はてなブックマーク」の編成をしている青木です。元々ライターのアルバイトとして所属していて、現在は社員として編集の仕事をしています。前回記事にも書きましたが、私は舞台が好きで、今年はもう130公演観ています(10月1日時点)。今気になっているものは、舞台つながりで「PSVR」です。

野瀬:えっ! なぜ舞台でPSVR?

青木:舞台って“ナマ”のものなので、パッケージにしちゃうと面白さが半減しちゃうのが悩みだったんです。そこでPSVRの登場ですよ! 舞台をこれで観れるんです! PS4で配信されているVR用に編集されたコンテンツで舞台を観れるようになるんですよ!

社歴6年の青木。今回は京都から遠隔で参加

——なるほど(熱量がすごいな……)。では次は野瀬さん。

野瀬:はてなブログMediaで運用されているオウンドメディアのコンテンツ制作や、はてなブログの編集をしています。「それどこ(楽天さま)」では、はてな側の編集責任者として、全体の進行管理をしています。

私は最近、ラジオをよく聞いています。特に好きなのはTBSラジオの「たまむすび」。やっぱりLIVE感が半端ないのと、キャッチーな情報を拾うのはラジオやテレビが早いなぁと思っていて。世間で今、何が人気になっているのか、情報収集のツールとしてラジオはとってもいいですね。(はてなダイアリーを利用していただいている)映画評論家の町山智浩さんがコメンテーターで出演されていますよ。

——ラジオのコミュニティーはネットに近いところもあり面白いですよね! 僕もTBSラジオの「JUNK」枠を昔から好きでよく聴いています。では、最後に毛利さんお願いします。

毛利:はてなには2012年からジョインしています。現在はいち編集者として手を動かすほか、シニアエディターとしてチーム全体を見たりしています。最近は「ポケモンGO」にハマっていて、「お台場」や「錦糸町の公園」で、目当てのポケモンが出ると聞くと、何時間もさまよったりしています。もともと目的もなく無意味に歩いてるのは好きで……。

青木:無意味に? どうしてですか?

毛利:「この駅とこの駅の間は歩いて行けるのか?」って試してみたり、「あっ! この道とこの道はここで繋がってるんだ」って感動していたり。そういう街への興味が、「ポケモンGO」という意外なコンテンツと繋がったのが面白くて。ただの「街歩きおじさん」ですね(笑)。

——デジタルな体験からリアルな体験へのシフトですね。

毛利:青木さんの舞台の話にも通じるのかもしれないけど、現場に行ったほうが“シュッ”と分かることってあるじゃないですか。そういう現場感があるものっていいなぁって。

青木:日本2.5次元ミュージカル協会の会長さんが、「現代人はデジタルに触れすぎているから、“ナマ”のものに対する憧れの力がすごく強くなる」とおっしゃっていて、確かにそうだなぁと。はてなの編集部だと、何ができますかね。

毛利:制作を一部担当させてもらっている「SUUMOタウン(リクルート住まいカンパニーさま)」あたり、そうかもしれませんね。ブロガーさんやライターさんが、暮らした街やゆかりのある街について、自分のリアルな体験をもとにした寄稿をしてもらっている。

ネットで拾ったものをネットに戻すっていう「バイラル」な手法もいいけど、実際に人が動いて得た何かをネットに出して、それを見た人が動いて、ぐるっとまたネットに戻ってくる。この循環がぐるぐる回っていくと面白いですよね。

野瀬:最近は「それどこ」でも、取材記事が増えています! 実際行ってみないと分からないことってすごくあるし、記事に厚みが出ますね。

社歴2年の野瀬。「それどこ」の編集責任者

紙とWebの編集の違いって?

——もともと野瀬さんと毛利さんは、紙の編集をされていたんですよね。

野瀬:私は情報誌のWeb媒体を担当していたんですが、人手が足りないときは紙の方も手伝っていました。

毛利:僕は、14年ほど出版社で実用書の編集をしていました。

——紙とWebで、編集に違いってありますか?

毛利:本は何万字の塊として情報を提供するまとまった単位の読み物ですが、Webは1記事単位なので、せいぜい数千文字です。その限られた中でいかに十分な魅力を伝えるかに注力することがWebの編集なのかもしれないですね。

——連続している世界で読ませることと、分断されている世界で読ませることの差、でしょうか?

毛利:なんかこう、寿司職人みたいですよね。

——え? 寿司……?

毛利:たまたま記事を目にしてくれたひとに、その1記事で満足してもらいたい。ちゃんとしたコース料理じゃなくてファストフードなんだけど、そこに「満足してもらう技」みたいなものがあって……。寿司とか蕎麦とか……。

——ちょっと何言ってるかわかんないです。

野瀬青木:(笑)

社歴5年の毛利。回ってない寿司や立たなくていい蕎麦は久しく食べてない

編集する上で大切にしている事と「はてなっぽさ」って?

——では皆さん、編集する上で「大切」にしていることってありますか。

野瀬:オウンドメディアの編集では、ブロガーさんの特徴や色を生かしたまま編集しています。

毛利:一方で、商業メディアでの執筆経験がない方もいらっしゃるので、ひとりでも多くの人に読まれるには、どこまで手を入れるのがベストなのかを考えています。僕は実用書をやっていたから、伝わりやすさ優先でけっこう手を入れがちなんですよ。ブロガーさんの寄稿もその調子で編集しすぎちゃう傾向があって、良くないなと思ってます。

野瀬:客観的に見て、意味が分からないってならないように言葉を補ったり、見せ方を工夫したり、写真やリンクをどの位置に入れようか考えたり。読者が完読するために、どうしたらもっと良くなるかの「お手伝い」が「編集」という仕事だと思います。

青木:私は、はてな独自の感覚を大切にしています。はてなの編集者には「はてなっぽい」っていう言語化できない共通認識があると思いますね。

——「はてなっぽい」という言葉は、僕はいまだにつかめません。はてなには、読者との距離が近い環境があるから、顔の見えるユーザーへ的確にコンテンツを提供できるということですかね?

毛利:そうですね。「はてなっぽさ」は強みであると同時に、ある種のジレンマがあると思っています。僕はもともと、はてなユーザー側だったので、はてなユーザーがはてなユーザーに向けて記事を作るやり方では、ネット全体に届く記事になるのかどうか……。

——なるほど、そういう悩みもあるんですね。皆さんは、はてなと他の会社を比べて感じることなどありますか?

野瀬:私は、はてなの編集はわりと柔軟にいろいろなやり方を取り入れていると思いますね。先ほど「『はてなっぽさ』はある種のジレンマでもあるかもしれない」という話が出ましたが、それもあってか特にここ最近は自由に「それぞれが考える良い方法」を取り入れようとする姿勢があると思います。

青木:はてなニュースの場合は、例えば「煽るタイトルはつけたくないよね」というような意識は全員が持っています。煽るタイトルの方がバズるとしても、一度自分たちのスタイルを崩しまうと、これまで積み上げてきたはてなニュースの信頼性までなくなってしまいそうで。ありがたいことにとてもしっかり読んでくださるユーザーさんが多いので、浅いことは書けませんし、いつも気を引き締めています。そういう意味で、ユーザーさんにはすごく育てられましたね。

——マスというよりは、特定の人に届けているんですね。

今後のはてなでやっていきたいこと、一緒に働きたい人のこと

——最後に、皆さんが今後はてなでやってみたいことや、一緒に働きたい人について聞いてみたいです。

青木:私は、インタビュー記事がやりたいですね。はてなニュースが意識しているのは、読者に「きっかけ」をどうやって与えるのか。自分が知らない分野のプロや、職人、専門家などへのインタビューを通じて「その世界を好きになったきっかけ」を発信していきたいと思っています。

野瀬:一緒に働きたい人は、ネットに限らず「好きなものがある人」ですかね。編集者って、持っている「情熱」のようなものを記事にぶつけるところがあるじゃないですか。そういう感覚って何かしら「好きなもの」がないと養えないかなと。編集以外のはてなスタッフも、ネットに限らずいろんなことやものが「好き」で、それを自由に楽しんでいる方が多いですね。

私も最初はなじめるかビビってたんですが、人に強要せず、それぞれの個性を活かす文化があるので、今では楽しくやっております(笑)。気軽にエントリーしてもらえるとうれしいです!

毛利:はてなという会社には「エンジニアリング」と「コミュニティー」という2本の柱があって、そこに「メディア」の力が加わると面白いということは、社内でも社外でもずっと言われてると思うんです。すでにブログやブックマークなどで情報発信しているユーザーもたくさんいて、ポテンシャルもコンテンツもあって読者もいるところで、メディアの形づくりを一緒にやっていける人が来てくれたらうれしいですね。

◆◆

この後も話は続き学生時代の話や就活の話など、いろいろ話をしました。同じような経歴の人はびっくりするくらい、いませんでした。皆バラバラです。

はてなの編集ってこんな人! と結論めいたことは分かりませんでしたが、今考えていることや、向いている方角は不思議と似ていました。はてなの編集は多様な感受性で世の中の今を見つめながら、多様な読者へ熱量を届けることが好きなようです。

そんな我々とリアルとデジタルを行き来しながら一緒にメディアを作っていきませんか?

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好きなことを仕事にするということ はてなニュースの最近の取り組み

こんにちは! はてな編集部の青木です。2015年に入社して以来、はてなニュースはてなブックマークの編集業務を担当しています。

前回は飯塚がはてなブックマークの「特集」についてご紹介したので、今回ははてなニュースで私が最近取り組んでいることをお話ししようと思います。

はてなニュースは、ネット上で話題になっていること、これから話題になりそうなことを中心に取り上げるはてな初のWebメディアとして2009年に始まりました。当初は「はてなブックマークで注目されていることを外へ発信していく」という目的もあったので、2014年までは「はてなブックマークニュース」という名称で運営していました。

オープンから7年目を迎えた現在は、3代目編集長・飯塚のもと、はてな本社がある京都のニュース編集部から日々記事をお届けしています。

はてなニュースでは、基本的に「ネットで注目されていること」「これから話題になりそうなこと」を記事にしていますが、近ごろは「編集者が気になっていること」を紹介する機会も徐々に増えてきました。編集者それぞれが「これが好き!!!!!」と思ったコンテンツをどんどん出しています。

「そんなに好きなんだったら、仕事にすればいいんじゃない?」

最近のはてなニュースでは、これまであまりなかったエンターテインメント系の記事、特に舞台にまつわる記事がじわじわと増えています。実はこれこそ、私が今最も「好き!!!!!!!!!!!!」と叫びたいコンテンツの一つ。この良さをもっと多くの人に知っていただきたい! と心から推しているジャンルなんです。

はてなニュース「カルチャー」カテゴリ

はてなニュース「カルチャー」カテゴリから。最近は舞台にまつわる記事が充実しています

今から約3年前に初めて劇場でテニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)を見て、一瞬にして心臓のど真ん中を撃ち抜かれてしまって以来(語りだすと1日中かかってしまうので、ここから3年間の歩みは端折らせていただきます)すっかり舞台のとりこになってしまった私。周りの編集スタッフにも常々「2.5次元ってすごい、びっくりするくらい面白い……舞台は最高……」と語り続け、いつの間にか年間の観劇回数が年間の休日日数(およそ120日)を超えるほどどっぷりとはまっていく日々……。

そんなある日、毎日のように普及活動に勤しむ私を見た上司が「そんなに好きなんだったら、仕事にすればいいんじゃない?」とアドバイスをくれました。目の前がパッと晴れたような瞬間が訪れました。好きなことを仕事にできるかもしれない?

最初は好きすぎるがゆえに仕事として触れてはいけないのでは……という謎めいたためらいもあったのですが、ネット上の話題を取り上げるだけでなく、編集者の得意とする分野を掘り下げていくことは、これからのはてなニュースの強みになるのかもしれないと思いました。

そして勢いに乗るまま制作会社にメールを送った結果、公演やゲネプロ(関係者・マスコミ向けに公開される本番前の通し稽古)取材の案内をいただくようになり、仕事としても“現場”に足を運ぶようになったのです。

“まだ知らない人”にこの熱量を届けたい

これまでのはてなニュースはこうしたエンタメ現場と縁遠いメディアだったので、とにかく目に入るものすべてが新鮮でした。慣れない場所に飛び込んでいくのは勇気がいりましたが、それでも「この魅力を、たくさんの人に届けたい」という思いの方が勝っていました。同時に、見る人を熱狂させる制作の裏側をのぞけること、自分がその場に仕事として参加できていることに心が震えました。

取材の際に記者が身に着けるプレスパス

取材の際に記者が身に着けるプレスパス。自席にある照明よけに飾っています

ゲネプロに限らず、撮影が可能な現場ではライターとカメラマンに分かれて参加するというメディアが多い中、はてなニュースでは取材・執筆・撮影のすべてを私1人で担当しています(写真のレタッチは弊社デザイナーにお願いしています)。

写真は多いときだと1公演につき2,000枚以上撮っているのですが、ほとんどの場合、記事に載せられるのは5〜10枚程度。さらに、写真を撮っているとステージを直視することが難しく、取材中はほぼファインダー越しでしか公演を見たことがありません……。

しかし、きちんと公演を見て、読者に伝えることこそ大事な「仕事」。最初は手探りでしたが、プライペートでよく舞台を見ているということもあり、次第に見どころや、ここを押さえるとより伝わりやすいだろうというポイントがつかめるようになってきました。

記事を書くときに心掛けているのは、なるべく舞台について知らない人にも響くように、ということです。ファンの方たちに届けたいという思いももちろんありますが、「好き」なこととはいえ、名刺を持って赴いている以上、私が取り組んでいるのは「仕事」です。はてなニュースの編集ライターとして、なぜこれが盛り上がっているのか、どう面白いのかをまだ知らない人に伝えたいという思いが強くあります。

「好き」で身に付けた自分自身の感覚と、「仕事」で培った編集者としてのスキルを組み合わせて、舞台の面白さと熱をより広げていければと考えています。

これからも「好き」を生み出すきっかけを

舞台取材を始めたころは不安もありましたが、想像以上に多くの方が読んでくださり、感想もたくさんいただけて本当に嬉しく思っています。

記事への反応を見ていると、「これってこの人が演出だったの?」「音楽担当ってこの人だったんだ!」など、意外なクリエイターが携わっていることに驚かれる方も多いようです。こうした“意外さ”から舞台に触れる読者の方を見ていると、「まだ知らない人に向けて知ってもらうきっかけを作りたい」という私自身の目標も達成できつつあると感じます。

「はてなニュースの舞台記事は熱い」というコメントを見たときは胸がいっぱいになりました。舞台ファンの方にもTwitterなどで「いい記事」と言及していただけるとほっとします。やはりファンの方に喜んでもらえるのも、とても嬉しいです。

好きなことを仕事にしていると、とてもシンプルですが、毎日が楽しいです! どんな挑戦をしていこうかと考えることそのものにわくわくします。舞台制作の裏側は、想像していたよりもずっと情熱的です。その裏側に触れている編集ライターとして、コンテンツが生まれていく過程をできるだけ分かりやすく読者の皆さんにお伝えしていきたいと考えています。これからは舞台のみならず、面白い世界をどんどんのぞいていけたらと思っています。

私が以前書いた記事のはてなブックマークのコメント欄に「知らなかったけど、読んだら好きになってしまった」という感想がありました。もう数年前のことですが、誰かの「好き」を生み出すきっかけを作ることができたのだと、自分の仕事に初めてやりがいを感じた瞬間でした。

まだまだ未熟な部分もあり悔しい思いをすることもありますが、こうしたコメントを読んでいると、よし、頑張るぞ! とまた前を向くことができます。

はてな編集部はもちろんですが、はてなという会社には「好きなことを好きだと表現する人を応援していこう」という土壌があると思っています。これは社員だけでなく、サービスを利用していただいているユーザーの皆さんに対してもそうです。

好きなことがもっと好きになれるきっかけ、これから好きになれそうなことが見つかるきっかけを、はてなニュースでは今後もお届けしていきたいと考えています。


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はてなブックマークの編集は何をしている? 「特集」の編成について

こんにちは、はてな編集部の飯塚です。2011年に入社し、主にはてなニュースはてなブックマークに関する編集業務を担当しています。

取材や記事執筆などのイメージがしやすい“はてなニュースの編集”に比べて、“はてなブックマークの編集”というと「一体何をしているの?」と思われる方が多いかもしれません。今回は、はてなブックマークの編集業務の一つ「特集」の編成についてお話ししたいと思います。

はてなブックマークの「特集」とは?

特集は、はてなブックマークの「世の中」「暮らし」「テクノロジー」といった各カテゴリをさらに細かいテーマに分けてチェックできる機能です。ユーザーさんのブックマーク活動・はてなの編集・はてなのエンジニアリングの3つによる新しい取り組みとして、2015年8月にスタートしました。はてなブックマークのアルゴリズムで抽出されたデータをもとに、より特集のテーマにマッチした情報を届けられるよう、編集スタッフが中心になって編成しています。

「暮らし」カテゴリの特集

「暮らし」カテゴリの特集

新しいはてなブックマークで何ができる? Vol.1「特集」 - はてなブックマーク開発ブログ

特集の目的は、はてなブックマークに集まっている有益な情報をテーマごとに分け、興味のある情報をより見つけやすい形でユーザーさんに提供していくことです。また「はてなブックマークにこんな話題もあったんだ!」と感じていただけるような、新しい発見につながることも期待しています。

編集スタッフが特集のテーマを決める際には、次のようなポイントを重視しています。

  • はてなブックマークで多くのエントリーがブックマークされているテーマ
  • 季節やトレンドに合ったテーマ
  • 1年を通して定番のテーマ
  • はてなブックマークやはてなブログで盛り上がっている話題など、はてなならではのテーマ

特集として成立させるためには、そのテーマに関するエントリーがコンスタントにブックマークされている必要があります。そのような“ユーザーさんにとって関心が高いテーマ”の中から、季節やトレンドに合ったもの、定番のものをその時々でピックアップしています。

2016年8月現在で公開している特集は、全カテゴリ合計で約180個。個別の特集を楽しんでいただくのはもちろん、トップページや各カテゴリのページを見たときにも、並んでいる特集から季節やトレンドを感じていただけるようにと考えています。

こんな特集を作っています

アプリで見た「テクノロジー」カテゴリの特集

はてなブックマークには、エンジニア向けの記事や最新のWebサービス・ガジェットに関する記事など、IT系の話題が多く集まっています。「テクノロジー」は、最もたくさんの特集を抱えるカテゴリの1つ。「機械学習」「IoT」「VR」などのトレンドを押さえた特集、エンジニアの「発表資料」や「技術ブログ」だけを絞って見られる特集などがあります。

アプリで見た「アニメとゲーム」カテゴリの特集

同じくはてなブックマークで人気なのが、アニメやゲームの話題。「アニメとゲーム」カテゴリでは、一大ブームを巻き起こしている「ポケモンGO」や、“今期のアニメ情報”が分かる「2016年夏アニメ」など、その時々で旬なテーマをピックアップしています。各ジャンルの新情報だけを追える「アニメニュース」「マンガニュース」「ゲームニュース」という特集もあります。

アプリで見た「暮らし」カテゴリの特集

衣食住をはじめ日々の生活に欠かせない話題を扱う「暮らし」カテゴリにも、たくさんの特集があります。「グルメ・レシピ」「インテリア・雑貨」といった定番の特集はもちろん、季節を感じる特集が多いのも特徴。2016年8月現在は「夏休み」「ビール」「かき氷」と、夏らしいテーマを設定しています。はてなならではのテーマとして、はてなブログなどでも人気が高い「かばんの中身」、さまざまな書き手が感じたことを思いのままにつづる「それぞれの暮らし」といった特集も用意しています。

そのほかのカテゴリにも、バラエティーに富んだ特集があります。日々調整や入れ替えをしているので、ぜひ何度も訪れてみてください。

多様なテーマのエントリーがたくさんブックマークされるほど、新たな特集の可能性が広がります。膨大な数のエントリーが集まるはてなブックマークをより便利に使っていただけるよう、また新しい楽しみ方を見つけていただけるように、これからも「編集」の面で支えていきたいと思います。


※記事中で紹介している特集は、2016年8月現在公開中のものです


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「はてな」という社名で苦労する

こんにちは、はてな編集部の万井(id:ayakoya)です。2008年に入社し広報・マーケティングを担当した後、2010年から「編集者」として、「はてなの編集」に関わってきました。

はてなに「編集」という職種が誕生するもっともっと前、今よりもずっと従業員数が少なかった頃、メールマガジンやサービスの告知、ガイド、ヘルプなどの「文章を書く仕事」には、広報担当者以外の職種(エンジニア、デザイナー、ディレクターなどなど)も携わっていました。徐々にスタッフの数が増え、組織が出来上がっていく中で、広報・マーケティング分野のスタッフが「編集」の仕事をするようになっていきました。

沿革 - 株式会社はてな

はてなの沿革ページの一部です。歴史を重ねてだいぶ長くなりました。

はてなというエンジニアが非常に多い会社で、私は図らずも「編集」に近い業務分野をずっと経験してきました。広報担当者だった頃はプレスリリースの執筆もしていました。そこから編集者となった今に至るまで、私が個人的にずっと悩まされてきたことがあります。それは「はてな」という社名です。

「はてな」の「は」、助詞の「は」

プレスリリースで書かれる文章の主語は、多くの場合“会社”です。書き出しが「◯◯(社名)は、……」となるケースが多いように思います。

はてなの場合はどうなるかというと、

株式会社はてなは、

こうなります。また、社名が繰り返される場合、「株式会社」を省略して記載することがあります。そういう場合は、

はてなは、

こうなってしまいます。

一般的に、文章の中でひらがなが連続すると読みづらくなるものです。また、「な」と「は」、ともに最後の一筆の形状が似ていてさらに読みにくい!

社名の中に助詞にも使われる「は」があることで、記者の皆さまにとってより読みやすいものにすべきプレスリリースが、どうしても読みづらくなってしまいます。かつての私は、日本語の文章としては問題ないことを知りつつも、書き進める手を何度も止めたものでした。「対象とする読者にとっての読みやすさ」という編集の観点で読み返すとき、ひらがなの連続を見るとどうしても考え込んでしまう瞬間があるのです……。

サービスに関する告知の場合は?

はてなが運営するサービスには多くの場合「はてな」が付きます*1。「はてなブックマーク」「はてなブログ」などの場合、サービス名を主語にして助詞の「は」を付けてもひらがなは連続しません。「はてなブックマークは、」「はてなブログは、」と、ひらがなとカタカナが良い具合に混ざってくれます。

また、告知用ブログの場合、サービスそのものにあらかじめフォーカスされた場でサービスに関する文章が書かれるため、「はてなは、」という文字列を意識する場面はあまりないように思います。

でも、思わぬところに落とし穴があります。

...はてなダイアリー、はてなハイク、はてなブックマーク、うごメモはてななどの主なサービスに表示されるはてなスターを...

【ハロウィン限定】はてなスターをはてなカボチャに変更しました - はてなダイアリー日記

平素ははてなダイアリーをご利用いただき、誠にありがとうございます。

はてなブログを正式サービスにしました - はてなダイアリー日記

「は」のみならず、「な」も重複してしまう場合があります。ついついひらがな3文字の「はてな」って文章中で扱いづらい!と内心八つ当たりすることも。

「はてな」というへんな名前も15周年

はてな最初のサービス「人力検索サイトはてな」(現:人力検索はてな)がスタートしたのは2001年7月15日。2016年7月15日にサービス開始から15年を迎えました。

はてなのサービスを使ってくださっているユーザーの皆さまにとって、「はてな」という名前はもしかしたら、多少見慣れたものになっているかもしれません。でも、「はてなというへんな名前の会社がある」ということはまだまだ知られていません。「はてな」という文字をすぐ社名だと認識してもらえるくらいに、サービスをもっと知って使っていただけるよう、私たち編集者もサービスやメディア、コンテンツに日々向き合っていきたいと思っています。

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*1:Mackerel」など「はてな」を冠さないサービス名もあります。

はてなの編集は、こんなことをしています。

こんにちは、はてな編集部の谷口です。普段は、はてなブログMediaで運用されているオウンドメディアのコンテンツ制作や、はてなブログなどの編集をしています。ちなみに、編集者のためのイベント「編む庭」の企画も担当しています。(第1回開催時はたくさんの方にご応募&ご参加いただき、誠にありがとうございました! )

イベント「編む庭」を開催したのは、名刺交換するたびに聞かれてきた「はてなの編集って、何してるんですか?」という質問がきっかけでした。

はてなには今、十数人の編集者がいます(と言うとだいたい驚かれます)。人によりやっている仕事はバラバラですが、それぞれがさまざまなサービスの“技術以外の面”を支えています。私たちがどういう「編集」をして、どうはてなのサービスに関わっているのか。より多くの人に「はてなの編集」を知ってもらいたくて、イベントを企画しました。

今回は、2016年2月開催の「編む庭 -冬-」冒頭で発表したスライド「はてなの編集について」を交えて、はてなの編集は「何」をしているのか、紹介したいと思います。

はてなの「編む仕事」

はてなの編集は、大きく以下の4つに分かれます。

  • はてなブログの編集
  • オウンドメディアの編集
  • はてなブックマークの編集
  • はてなニュースの編集

それぞれどんな仕事をしているかは、次の通りです。

はてなブログの編集


はてなブログ

「はてなブログ」を担当する編集者は、ユーザーが作成したコンテンツの「発掘」と「後押し」が主な仕事となります。

ブログの“ネタ”を提案する「今週のお題」や、はてなブログで盛り上がっている話題を取り上げる「旬のトピック」、編集部おすすめのブログエントリーをシェアする「Facebookページ」など、さまざまな方法で見付けたブログを「後押し」しています。

また「週刊はてなブログ」というメディアでは、ブログの紹介やブロガーへのインタビューを行っています。加えて、ブロガーにブログの使用感などをヒアリングし、開発チームにフィードバックするなどの取り組みも行っています。

「発掘」したブロガーは、次に紹介する「オウンドメディア事業」で起用することも。

オウンドメディアの編集


はてなブログMedia ならオウンドメディア運営に必要な全てが揃う - はてなのコンテンツマーケティング支援総合サービス

昨今、企業のマーケティング手法として「コンテンツマーケティング」に注目が集まっており、自社でブログやサイトを立ち上げて情報発信に取り組む事例が増えています。こういった背景を受けはてなでは、はてなブログの仕組みを使ったオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」を提供しています。

現在さまざまな企業さまに導入いただいており、中には楽天さまの「それ どこで買ったの?」やリクルート住まいカンパニーさまの「SUUMOタウン」(一部)のように、記事の制作を請け負っているメディアも。こういった媒体では、はてなブログで発掘したブロガーに寄稿をお願いしたり、受け取った原稿の編集をしたり、コンテンツ制作を担当しています。

はてなブックマークの編集


はてなブックマーク

「はてなブックマーク」は、さまざまなエントリーが自動で掲載されます。この大きなソーシャルブックマークサービスを、よりたくさんの人に楽しんでもらうために「編成」という形で編集者が携わっています。

主な仕事は、アルゴリズムから抽出されたデータを手動で調え、テーマごとによりきめ細かい話題を提供する「特集」や、カテゴリトップのページリニューアルなどです。また、メディアにはてなブックマークを活用してもらうため、「公式アカウント」の開拓や提携も行っています。

はてなニュースの編集


はてなニュース

「はてなニュース」は、はてな唯一のニュースメディアです。編集部の活動拠点は京都で、今ネットで話題になっていること、これから話題になりそうなことを分かりやすく紹介しています。

メインの業務は、取材や記事の執筆、編集です。これまで紹介してきた中で、いちばん「編集者」という職業のイメージに近い業務内容ではないでしょうか。はてなニュースでは「記事広告」も販売しており、ほかのチームの編集者が兼任でPR記事の執筆や編集も行っています。

はてなの編集は「いろいろ」です

これまで紹介した業務以外にも、Webページやアプリに表示されるテキストやコピーの作成、告知文やヘルプページの作成などを行っています。こうやって、さまざまなサービスの技術以外の面を支えるのが「はてなの編集」の仕事です。

ひとくちに「編集」といっても、それぞれがそれぞれの「編集」をしているということを、この記事で少しでも知ってもらえれば、うれしい限りです。


今後もはてな編集部ブログ「編む庭」では、各編集者が「編集」にまつわるさまざまな記事をお届けします。どうぞお楽しみに!


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編成と編集の違い、リトルプレスとブログの共通点 編集者のためのイベント「編む庭」レポ【後編】

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前回に続き、編集者のためのイベント「編む庭 -冬-」の様子をお届けします。後編となる今回は、内沼晋太郎さん(numabooks代表/本屋B&B共同経営者/DOTPLACE編集長)と、伊藤博典(株式会社はてな チーフエディター)による「対談 その2」をレポートします。

ブックコーディネーターとして活動している内沼さんは、クリエイティブチーム「numabooks」の代表を務めながら、下北沢で書店・イベントスペースの「本屋 B&B」を経営。メディアのプロデュースやコンサルティングなども行っています。伊藤は、はてなブックマークの編集をする傍ら、個人でリトルプレスの制作を行っています。イベントでは「はてなブックマーク」というメディアの特徴や、リトルプレスとブログの類似点、編成と編集の違いについて話しました。

* *

はてなブックマークは「特殊なメディア」

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内沼 はてなブックマークはどういうメディアなんでしょうか。

伊藤 僕がはてなに入ったとき、「個人の思いや考えが書かれた文章が、全く知らない誰かに伝わる。それがインターネットの本質的にいいところ」という哲学が、全社に浸透しているなと思いました。はてなブックマークで上がってくる記事も即時性の高いものよりも、ストレートニュースを咀嚼(そしゃく)したものが多いように思います。つまりは、あるニュースに対して個人の見解を交えたものですね。僕はそこが特殊なメディアだと捉えています。

内沼 僕も毎日はてなブックマークを見ていますが、そういったエントリーをよく見かける気がします。はてなブックマークの「編集」は、具体的にどんなことをされているのですか?

伊藤 はてなブックマークは自動でメディア面が出来上がるので、基本的には編集を介さなくてもいいものです。しかし中には「見せ方や切り口を変えたほうがいいんじゃないか」というものもあります。それについては、エンジニアやサポートの人など、違う職種の人も交えてSlack(チャットツール)やグループウェアなどで意見を出しあって試行錯誤しています。

内沼 明確な何かしらの基準があるわけでもなく、トップダウンの編集長がいて、その人の思想のもとで作っていくわけでもないと。オンラインでずっと編集会議をしている感じでしょうか。

伊藤 そうですね。ただ、現在はてなではオウンドメディアの運営にも携わっていて、そこでの目的は「企業のブランドを作ること」です。となると、どんなコンテンツをどのように見せていくか、それを決める編集長が必要になります。その編集長にどういう権限を与えるべきか、試行錯誤しながら考えているところです。

リトルプレスとブログは似ている

内沼 伊藤さんは個人でリトルプレスも作っていますが、はてなでの編集業と比べてどうですか?

伊藤 すごく極端なことをしていると思っています。はてなブックマークは自動で回るのが理想。要は自分が関わらなくてもいい状態がベスト、というメディアです。一方でリトルプレスは、全部自分の好きなようにやりますし、自分が作らなかったらそもそも世の中にないものです。

リトルプレスなど個人的な文章や同人誌は、各人がどんどん作って、内沼くんがやっている「B&B」のようなプラットフォームで売っていく。パブリックなメディア面は自動で良質なものを作って、できれば人間のコストを下げていく。こういうバランスのとり方をする人は少ないかもしれませんが、僕はそれが落ち着きます。

内沼 その点で考えると、ブログをいくつも持っている人は近い感覚を持っていそうですね。片方のブログではニュースぽいことをやって、もう片方のブログでは日記的な内容を書く。それは、その人にとってバランスをとっているのかもしれません。では、伊藤さんにとってブログとリトルプレスは似ていますか?

伊藤 そうですね。個人の日記のようなブログを尊重する面と、リトルプレスを置いてくれる本屋さんがいる状況は同じだと思います。

内沼 「B&B」は、トーハンという大きな取次を通じて扱える新刊をメインに取りそろえている書店です。ですが、個性的なこともやっていこうと、直接の取引でリトルプレスも増やしていっているところです。個人的なところを愛して、なおかつ、それがプラットフォームになっている―― そういう点で「B&B」とはてなは似ているかもしれませんね。

伊藤 リトルプレスは最近どうなんですか? 波としては、ひと段落したのでしょうか。

内沼 うーん……。してないんじゃないですかね。個人にとって、インターネットでの発信のハードルはもちろん下がっていますが、一方、印刷物を作るハードルも同じくまだ下がり続けていると思います。「B&B」のオープン当初から変わらず、コンスタントに申し込みがある状態です。人が紙のものを作りたくなる気持ちは、そんなに変わらないのかもしれませんね。

伊藤 あと、「B&B」といえば毎日イベントをされていますよね。はてなの編集としては今回が初めてのイベントだったんですが、これを毎日するってすごいと思います。

内沼 「B&B」にとってイベントは、本屋という「場」のメディア性を生かして、毎日編集しているオリジナルの本のような商品です。最初から毎日やることを前提に、人も空間も考えていますから、それほど難しくないですよ。

最近、オウンドメディアを運営してブランドを作っていく動きが盛んですよね。「B&B」の場合は有料ですけど、たとえば企業が持っているスペースで毎日無料イベントをやれば、ある種リアル版のオウンドメディアになると考えています。「どういうゲストを呼んで、どんなテーマで話すか」で来るお客さんが異なってきますし、そのラインアップでブランディングをすることができます。「企業をどんなブランドにしていくか」「どんなお客さんに伝えていくか」というオウンドメディアを運営する目的と似ているなと。場所や形態は違いますが、共通するところはありますね。

編成と編集の違い

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伊藤 事前にイベント応募者から「『編成』と『編集』の違い」について教えてほしいという質問がありました。僕は、メディアを作るには「編成」と「編集」という2つの視点が必要と考えています。これらの違いは、編成は規律(ルール)がはっきりしているもの。たとえば、「この時間帯にこれを出す」など、あらかじめ決まったルールに沿って面(メディア)に組み込んでいくものだと思います。一方で、編集はふわふわとして自由なもので、毎回やることを決めていいものかなと。

内沼 Webメディアは編成で成り立っている部分が多いですよね。あと編成は“仕組み”がすでに出来上がっていて、そこにコンテンツを入れていく感じなのかなと。

伊藤 そうですね。メディアやサービスは、裏側に管理ツールのような仕組みがあることが多いです。そして、その仕組みの範囲内で動かすので、やはり規律があります。紙の編集で自由に動いていた人には少し窮屈かもしれませんね。ただ、仕組みはちょっとしたことでコミュニティーに動きをもたらすので面白いです。既に構築されている仕組みから、少し閾値を変えるとか、線の太さを変えるといったテストで動きに変化が出てきます。規律と管理ツールのような仕組みを楽しめる人は、編成に向いているかもしれませんね。

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2回にわたってお送りしたイベント「編む庭」のレポート、いかがだったでしょうか? 編集という仕事に、少しでも興味をもっていただけたらうれしいです。前編の様子は下記で紹介しています。あわせてご一読ください。

editor.hatenastaff.com


この「編む庭ブログ」では、今後も編集に関するコンテンツをお届けしていく予定です。次回更新をどうぞお楽しみに!

編集は「自動化」されていく仕事なのか 編集者のためのイベント「編む庭 」レポ【前編】

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2016年2月18日に、はてな東京オフィスで編集者のためのイベント「編む庭 -冬-」を開催しました。その様子の一部を2回に分けてレポートします。

今回は、高橋征義さん(株式会社達人出版会代表取締役/日本Rubyの会代表)と、毛利勝久(株式会社はてな シニアエディター/週刊はてなブログ編集長)による「対談 その1」の様子をお届けします。高橋さんはWebアプリケーションエンジニアを経て、2010年に技術書の電子書籍を制作・販売する「株式会社達人出版会」を設立。現在はその運営に携わっています。毛利は本(紙)の編集を経て、現在ははてなブログ週刊はてなブログなどの編集をしています。こういった経歴をたどり、編集の現場に関わっている2人が、編集者に求められる役割や、電子書籍における編集という仕事の在り方について話しました。

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情報を発信する手段がたくさんある中で、なぜ「電子書籍」なのか?

毛利 高橋さんは技術情報を「電子書籍」にまとめておられています。私は、かつては技術情報を「本」にまとめ、現在は「ブログ」という場所で技術情報を発信するための施策を考えています。本(紙)、電子書籍、ブログ……。このように情報を発信する手段は多様化してきています。

高橋さんは個人ブログも運営されていて、先日アップされた記事もはてなブックマークが伸びてホットエントリーに入っていましたよね。なので、おそらく「ブログが持つ発信力の可能性」は少なからず感じておられると思います。なのに、あえて「電子書籍」を選んだのはなぜですか?

高橋 Webは基本的に無料なため、どうやってマネタイズするかという課題がよく取り上げられます。そして、その解決策の一つとして広告モデルの話になることが多いです。

広告モデルは、読み手ではなく第三者(広告主)がお金を払うことでマネタイズしています。でも、そうすると読者と著者の関係がうまく成立しないように思ったんです。そんな時に電子書籍が出てきて、これなら読者が著者に直接お金を払うことでマネタイズできるなと。

毛利 電子書籍を作る上で感じる「紙との違い」などはありますか?

高橋 紙と大きく違うのは「更新できるか、できないか」です。売り方にもよりますが、電子書籍はユーザーと購入履歴がひも付いていることが一般的です。そのため、内容に訂正が発生したときに、ユーザー側でコンテンツを更新することができます。これはコストにも跳ね返ってきます。例えば誤字などのミスがあった場合も、電子書籍ならユーザーは“無料”で交換する(コンテンツを更新する)ことが可能です。

毛利 では、紙と比べて、電子書籍を作るときのメリットなどはありますか? 例えば、全てクラウド上で済ませることができるなど。

高橋 そのあたりは紙の編集も経験されている毛利さんの方がお詳しそうですね(笑)。はてなブログのようなブログの仕組みを利用して、原稿を作ることはないのですか?

毛利 ありますね。はてなのブロガーさんに寄稿していただくときは、下書きブログの編集メンバーにブロガーさんを招待しています。そうすると、ブロガーさんの管理画面にその下書きブログが表示されて、そのまま書いて入稿してもらうことができます。

高橋 なるほど。Webの媒体では、このようにクラウドを使ったパブリッシングの仕組みがどんどん利用されてきていますよね。ある程度のレベルまで進化すれば、紙の媒体も似た仕組みで出版できるのではないかと考えています。

自動化では対応しきれない編集者の役割

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高橋 本を作るときは「著者・編集者・読者」がいる状態が一般的です。しかし弊社が作っている電子書籍は、書籍の価格帯や部数などの事情から編集にコストをかけられないのが現状です。そのため、自動化できるところは対応していこうと。

弊社の電子書籍はITエンジニア向けということで、著者はエンジニアです。そこで、開発の現場でいつも使っている自動化の仕組みを、本を書くときにも生かそうとしています。ちょうど今、「Atom」というGitHubが提供するエディタを使って、「textlint」という校正ツールを試用しています。今試しているのは、ある特定の漢字に対して開く(ひらがな表記)/閉じる(漢字表記)というルールをあらかじめ決めておき、そのルールに反すると警告を出すといった機能です。

毛利 その校正ツールは、例えばサーバーに原稿を送った段階でチェックが走るという使い方もできるのでしょうか。

高橋 はい。そういう展開も可能だと思います。ただし、こういった校正ツールを整備しても、編集者がいなくなるというわけではありません。著者によって文章のクセはありますし、このパターンのときは許したい/許したくない表現とか、同じ本でも一つのルールに統一できないことってありますよね。やはり、こういった校正ツールでは、単純な用字用例ですら編集者のチェック能力にはかなわないのが実状です。ましてや意味レベルでのチェックはまだまだです。

ちょうど先日「たのしいRuby 第5版」という新刊を出したのですが、校正をSBクリエイティブの編集部の方にしてもらいました。その時の指摘がどれも的確で鋭かったです。そういった「編集者目線のチェック」を自動化するのは難しく、校正ツールはあくまでもサポートだなと思います。

なので、この校正ツールはどちらかというと著者が入稿するときの利用を考えています。誤りがあれば警告を出して、人を介さずに事前に見直してもらう感じです。そしてチェックが通った原稿だけがサーバーに残ると。

毛利 著者がセルフチェックで使うというわけですね。

高橋 そうですね。うまくいけば文字の校正にかけていた編集者のコストを、別のところに生かせるのではないかとも考えています。

毛利 (コンテンツを更新できる電子書籍においては)表記の統一がだいたいできていれば、読者はそこまでクオリティを求めていない気もします。

高橋 「求めていない」というよりも「許してくれるかな」という感じですね。理想的なのは、ある程度のクオリティに仕上がったところで読者に配布し、おかしいところがあれば出版社へ連絡をもらう。そして、訂正したものを読者にダウンロードしてもらうという形かもしれません。

毛利 それは出版社や紙の編集者ではなかなか出ない開発者的なアイデアですね。電子書籍ではそのようにβ版の段階でリリースして随時更新していくほうが、トータルコストがかからないということでしょうか。

高橋 はい。あとIT本というジャンルは、情報を必要とするタイミングという点で、速く出してほしいというニーズもあります。速さに重きを置くか、正確さに重きを置くか。もちろん最終的には正確な内容にならないとダメですが、読者からのフィードバック体制も整え、そこも含めてパブリッシングの仕組みがうまく作れるといいなと思っています。

毛利 編集リソースを読者にも割り振り、皆で本を作る―― これって先進的な感じがしますね。

高橋 将来的にはそうしたいですし、そのくらいにならないと電子書籍も発展しないのではないかと考えています。

編集者に求められることとは

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毛利 今回、イベント応募者からさまざまな質問が寄せられているので、最後に答えようと思います。えーっと「編集者になるにはどうすればいいのか?」……これは難しい問いですね。

高橋 そもそも、Webでコンテンツを作る人の間では「編集者」という呼ばれ方はあまりしない気がしますね。

毛利 たしかに、はてなに編集部があると言うと驚かれることがあります。

例えば、バイラルメディアが注目を浴びだしたころ、議論はマネタイズに関するものばかりで、「編集者」という言葉は浸透していませんでした。そのため「マネタイズ面を見るディレクターはいるけど、コンテンツを編集する人はいない」と、当時思ったことを覚えています。

やがて、何らかの“チェック”がきちんとなされていないと思われる記事も出回るようになり、そのあたりの弊害が出てきてしまったように思います。と、同時に、そのころから「コンテンツを見る人も必要である」という議論がなされるようになりました。

弊社もオウンドメディアの運営に携わっていますが、企業がメディアを立ち上げるときの目的は「ブランディング」です。そのためには、もちろんマネタイズは重要ですが、読み手を考えたコンテンツ作りも大切だと思います。そして、そこをきちんと見れる人こそが編集者であり、それが編集者に求められる役割なんじゃないかと考えています。

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いかがでしたが? 編集とはどういう仕事なのか、編集者の必要性はどこにあるのか……。現役の編集者による生の声が伝わる対談となりました。「対談 その2」の様子は、後編をご覧ください。