これからの時代、Web編集者が大切にするべきことってなんだろう? はてな「編む庭」第2回レポート

2017年1月25日、編集について語るイベント「編む庭」の第2回を、はてな東京オフィスで開催しました。今回のテーマは「『編む』を仕事にする」。当日のイベントの様子をレポートします。

登壇者は、ビジネス系総合情報サイト「PRESIDENT Online」(株式会社プレジデント社)でプロデューサーを務める吉岡綾乃さん、ECサイト「北欧、暮らしの道具店」(株式会社クラシコム)の編集チームにマネジャーとして携わる津田さん、はてなでディレクター兼シニアエディターを担当する万井綾子の3人。司会は、はてなでプランナーと編集を兼任している田坂錦史郎が担当しました。

イベント応募者から事前に頂いた疑問や質問を、編集者として活躍するゲストに投げ掛け、編集という仕事を選んだきっかけやWebメディアの今後について座談会形式で語りました。

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編集者になろうと思ったきっかけは?

田坂 最初の質問は「どういう経緯で編集者になったのか」。皆さんそれぞれ経歴が違いますよね。

津田 私は約3年半前に外資系のコンサル企業からクラシコムに転職しました。入社当初は商品の受注管理をしていましたが、編集チームのスタッフが足りないということで、私に声が掛かって丸2年ほどです。

もともと編集の仕事には興味があり、大学では文学部新聞学科でメディアについて学んでいました。私、マンガの『美味しんぼ』が好きなんです。おいしいものを食べるのが仕事っていいな、好きなことを仕事にするのって素敵だなと思っていました。

株式会社クラシコム エディトリアルグループ マネジャー 津田さん

吉岡 私はこの登壇者の中だと唯一、編集職しか経験したことがないですね。もともと本や雑誌が好きで、新書の編集者か『週刊文春』や『週刊新潮』のような総合週刊誌の編集者になりたい、または新聞記者になって海外に行ってみたいなぁと思っていました。ですが、総合出版社も新聞社も落ちてしまって、最初の就職先はパソコン関連の書籍を出していたソフトバンクだったんです。私のキャリアはパソコン雑誌からスタートしました。

万井 編集という職務に就いたのは、はてなに入社してからなんです。最初は在京キー局の子会社で報道の仕事をしていました。そこからIT系のベンチャー企業に転職し、ポータルサイトの編成やWebマーケティングなどの業務を経験した後、はてなに入社して広報・マーケティングを担当しました。マーケティングの一環として2009年にニュースサイト「はてなニュース」がスタートし、そこで報道の経験を生かして、初めて編集という業務に携わり、後に編集長も経験しました。なので自ら志すというよりは、業務の流れで編集者になりました。

記事作りで大事なこと、編集長としてのあるべき姿

田坂 続いては「記事作りで大切にしていることを教えてください」。それぞれ、編集長またはメディアをマネジメントするといった立場から答えていただけると。

万井 はてなニュース編集長時代に始まり、複数の企業のオウンドメディアにおけるコンテンツの企画・制作、はてなニュースの記事広告など、これまで編集者として多種多様な記事を作ってきました。その中で一番大事にしているのは、当然ではありますが、些細なところまでもすべて「嘘をつかない」ということです。

オウンドメディアの記事の例でいえば、記事の読者にもクライアントさまにも同様に「嘘をつかない」を徹底しています。もし記事中の記載に誤りが見つかった場合は、記事のどこが間違っていていつの時点で修正したのかについて読者に説明するための変更履歴を記事内に追記して、クライアントさまに対し誠意を持って説明しています。

はてな ディレクター兼シニアエディター 万井綾子

津田 当社の場合は二つあって、一つは万井さんもおっしゃっていたように「本当のことを書く」です。よく青木(株式会社クラシコム 代表取締役・青木耕平氏)がインタビューで言っている「本当だから役に立つ、役に立つから面白い」というのを大事にしています。もう一つは、編集チーム全員が心掛けている「自分が一人目の読者になれるように」という視点です。自分が書きたいものや誰かが読みたいだろうなという記事は、もしかすると読者が0かもしれない。なので、自分が最初に読みたいと思える記事作りを意識しています。

チームのマネジャーとしては、スタッフに仕事を任せる姿勢が大事かなと。そして、それが上手くいかなかったときにきちんと責任を取るのがリーダーの役割だと思っています。

吉岡 お二人とかぶりますが、やはり「誠意」が大事だと思います。読者に対してはもちろん、取材した相手にも誠意を持って記事を出すというのは、前職で「Business Media 誠*1」の編集長をしていた当時からずっと心掛けています。

紙とWebの媒体、両方を経験して思うのは、やはり紙は文字数制限が厳しいということです。すごくいいインタビューをしても、例えば半ページしかないとなれば、面白い部分を泣く泣く削らないといけない、というのは紙の宿命。その一方で、Webは文字数を気にせず心置きなく詳しく書けるのが大きなメリットです。

インタビューした内容をできるだけ分かりやすく、嘘偽りなく伝えることって大事だと思うんです。よく政治家などが失言をメディアに取り上げられて大騒ぎになり失脚してしまう、という話がありますが、前後の発言を辿るとそこまで変なことは言っていないのに、一部だけを切り取ると事実と異なったニュアンスになるというケースが多いんですよね。Webの特徴を生かして「誠意」を持ってきちんと伝えようというのは「PRESIDENT Online」のプロデューサーになった今でも思っています。

株式会社プレジデント社 オンライン編集部 プロデューサー 吉岡綾乃さん

田坂 皆さん「正しく誠実に」という点が共通していますね。例えば吉岡さんの場合は取材をきっちりやる、津田さんの場合は商品をしっかり調べるというところに誠実さが宿ると思うのですが、Webメディアにおける誠実さはどうすれば読者に伝わるんでしょうか?

吉岡 私の場合は「詳しさ」と「分かりやすさ」を意識しています。読者にとって分かりにくいだろうと思ったところは、先回りして説明しておくこととか、理解の助けになる写真や図版を適切に入れるというのは、編集者の非常に大事な仕事ですよね。「こうやったら分かりやすくなる、読んで面白くなる」と読者にとって親切な見せ方を常に考える。お節介なくらいでいいんじゃないかなと思っています。

津田 社内では「違和感をスルーしない」という話をよくしています。例えば商品ページを作るのであれば、手に取ってお買い物できないお客さまに対して「本当にサイズ感が分かるか」「届いてがっかりしないか」という点で気になることがないかチェックしたり。インタビュー記事がきれいにまとまりそうな場合も「本当に伝えたいのはこういうこと?」と担当者に投げ掛けてみたり。自分が気になったことを率直に担当者に伝えてみて、一緒に考えてみるといいのかなと思います。

数値や収益と記事のクオリティーのバランスを保つ方法

田坂 次は「数値や収益と記事のクオリティーのバランスを保つ方法を教えてください」。これは聞きたい方も多いのではないでしょうか。クラシコムさんの場合はどうですか?

津田 「特集」として公開している取材記事やコラムは、実はかなりしっかり数字を見ています。とはいえ特に目標を立てているわけではなく「結果としてどれくらいの人に読まれたのか」を見ている感じです。記事には「PVが取れるはずの記事」や「PVというより世界観を味わってもらいたい記事」など、それぞれに役割があると思っていて。数値はその役割をどれくらい果たしたかを測る一つの指標ですね。

もちろん記事広告の場合は案件によって目標値を設定していますが、当社とタイアップするクライアントさまは当店ならではの方法で読者に価値を伝えてほしい、というケースが多いですね。個人的な実感としては、読者にとって「本当で役に立つ」記事、すなわちクオリティーを上げていけば、自然と数値や収益も後からついてくるのかなと思います。

吉岡 「マネタイズに振るとコンテンツのクオリティーが落ちる」と思ったことは、私はありません。コンテンツのクオリティーを上げながら、きちっとマネタイズすることが編集長の責務ですから。うちの媒体は、PVに連動するバナー広告の収入と記事広告の収入が主なので、何よりPV管理が大事です。ウィークリーでPVを管理するほか、編集者それぞれがデイリーやリアルタイムのPVも見ています。毎週の編集会では期待より数値がよかった記事やそうではなかった記事を整理して、次に生かす話し合いをしていますね。

「記事のクオリティー」という点では、予算の使い方にメリハリをつけてクオリティーを上げる、というのは常に考えています。例えば取材記事を作る場合、私は原稿書きも写真撮影もできるので、予算次第では自分ですべて担当してコストを下げることがあります。逆にここぞというときは、自分では書けない記事を執筆してくださるライターさんに頼んだり、プロのカメラマンさんに発注したりしますね。

万井 はてなが携わっているオウンドメディアの場合は、クライアントさまごとにKPIの設定やアプローチが違います。記事広告なども含め、世に出した記事のPVが多いに越したことはありません。しかし、とにかくその前提として、「読み手にとってよい記事を届けること」「クオリティーに関して妥協しないこと」を、はてなの編集者全員が常に意識しています。

記事の中の固有名詞で不明瞭な部分がある場合や、引用部分が正確かどうか確認したいときは、資料を求めて図書館へ調べに出向くこともあります。表現を変えることで事実関係の確認を不要にする方法などもあるので、きちんと調べぬくことは非効率的に見えるかもしれませんが、そういう細かな作業の積み重ねが媒体全体の信頼性を高めると考えています。

いい書き手を見つける方法とライターとの付き合い方

田坂 編集者はライターさんと二人三脚で仕事をする機会が多いですよね。「皆さんはどうやって『いい書き手』を見つけていますか」という質問も来ています。

吉岡 「とにかく面倒くさがらずに数を打つ」ですかね。特定の人とずっとタッグを組む方が気心も知れているし、ある程度のクオリティーも担保されるんですが、あえていろいろな人に声を掛けます。

万井 はてなブログのユーザーさんに寄稿をお願いするケースが多いので、はてなブログをよく見るようにしています。いいなと思ったブログがあると個人的に読み込んで「ブログのファン」になります。また、他社さんの媒体の記事を拝見して、いいなと思ったものをブックマークするなどして覚えておきます。好きなブログの書き手の方やいい記事のライターさんと、自分が担当する媒体や企画がうまくマッチするかどうか、日々考えています。

津田 当社の特集やクライアントさまとのタイアップ記事「BRAND NOTE」では、外部のライターさんとお付き合いはまだ少なくて、ほとんどの記事を編集チームが書いています。なので「チームにどういう人を採用するか」が大事なのかなと。二次面接ではエッセイのようなものを書いてもらって、どういうテーマをどんな切り口で書くか、というのをじっくり見ます。

田坂 なるほど。では「書き手といい記事を作る方法」はありますか?

津田 いい記事、の基準は難しいところですが……。当社ではポリシーとして「三つの分かる」というのを掲げています。一つ目は「読んで意味が分かる」、二つ目は「共感の分かる」、三つ目は「読者に行動のきっかけを与える動機が分かる」というもの。この三つがきちんと記事に落とし込まれているか、をチェックし、担当者と話し合うようにしています。

万井 はてなでは、書き手に対して「あなたの文章はこういうところがとても素敵です。だから、ぜひこういうことを書いていただきたいです」と、情熱的に伝えることも大事だと考えています。好きなブログの書き手さんに打ち合わせでお会いできると本当にうれしく思いますし、その気持ちも伝えます。書き手を好きであることがご本人に伝われば、信頼関係も自然と培われていくと思っています。吉岡さんはいかがでしょうか?

吉岡 一定のレベルのライターさんには、その人がやりたいことや、面白いと感じていることを書いてもらった方がいいですね。私はライターさんのSNSをよく見て、その人が最近はまっているものに近い仕事を振ることがあります。そうすると取材をノリノリでやってくれますし、いい記事になります。

田坂 さっきの「いい書き手を見つける方法」にも通じますね。

吉岡 「ライターは世代交代が進まない」とよくいわれていますが、私は「世代交代の前に若い人を育てていない」というのがずっと気になっているんです。なので、何か縁があって一緒に組むことになったライターさんには、できるだけその人の名前を冠した連載コーナーを作って、定期的に記事を書いてもらう、ということをよくしていました。連載を通じてライターさんが有名になっていくのは編集者にとってとてもうれしいことですから。

また、当たり前のことですが、編集者はライターさんの記事を真摯に読んでフィードバックすることが大事です。他の人がどう読んだか、というのがライターさんにとってはとても勉強になるので。ベテランの場合は黙ってこちらで直してしまうことも多いのですが、特に若い人の場合は、原稿には細かくチェックを入れるようにしています。

Webの編集者に必要なスキル

田坂 「より優れたコンテンツを作るために、Web編集者が『やるべきこと』や『大切にすること』は何だと思いますか?」。

吉岡 まずは、Webに限らずいろいろなことを面白がること。記者はこの道一筋な専門性の高い人でいいと思いますが、編集者はミーハーで浮気性なくらいがちょうどいいんじゃないかなと。特にWeb編集者は、新しいWebサービスをいち早く使ってみるのがすごく大事だと思います。仕事には直接役に立たないかもしれないけど、新しいものに触っているのといないのでは全然違いますから。例えばSNSなどは最初は趣味で始めましたが、TwitterやInstagram、Facebookなどは今や仕事でも必須ツールになりつつあります。早い時期からやっておいて本当によかったと思います。

津田 私は「ポジショニング」ですね。編集者にはいろいろな「形」があるので、「自分がどうすればチームの役に立てるか」を見つけることが大事だと思います。

当社の編集チームには、写真がすごく得意なスタッフがいれば、ロングインタビューをしっかり書けるスタッフもいて、それぞれに得意分野があります。私は別のチームから移ってきたこともあるので、ある程度の距離からチームを俯瞰(ふかん)したり、みんなが「面白そうだね」って進めているところに「本当にそう?」と一言投げ掛けてみたり。企画力や構成力、文章力といった基礎的なスキルの他に、そういうポジションを見つけることも仕事を作る上では大事かなと思います。

万井 Web編集者に限らない話ではありますが、教養を持つことが大事だと思います。いろいろな分野のことについて広く浅く触れておくだけでも、何か違和感のある情報を見たときに「あれ、これは間違っているかもしれないぞ」というちょっとした勘が働くようになるんですよね。

田坂 最近だとフェイクニュースも話題になっていますよね。そういう「気付ける能力」というのは、どうやったら習得できるんでしょうか?

万井 世間で旬の話題をきちんと追い掛けられているかどうかが試される部分だと感じています。例えば、米大統領選ひとつとってみてもいろいろな媒体でさまざまな視点の記事が出ます。「今はこれが大きい話題だからとりあえず一通りの情報を追っておこう」と意識して媒体を見ておくだけでもずいぶん視点が変わると実感しています。

女性は「編集者」に向いている?

田坂 今日の登壇者は全員女性ということで「『女性編集者』としてこれからの働き方に悩んでいる」という相談もきています。

津田 当社の編集チームは9人全員が女性で、子供のいるスタッフや結婚しているスタッフもいます。共通しているのは、全員午後6時に退社して残業しないこと。それでも、「こう働きたい」というのは人それぞれなので、マネジャーとしては「時短で働きたい」「そろそろ仕事のボリュームを増やしたい」など、本人の希望をしっかり伝えてもらった方がありがたいかなと。

万井 私は産休・育休の制度を整えている企業に取材する機会が多いのですが、女性でも働きやすい職場が増えてきていると感じます。もし編集者を続けられない状況になったとしても、編集のスキルを持っていると、いろいろな形で活躍できるケースがあると思います。編集者のキャリアを歩まれた方が、別の会社でそのキャリアを生かして広報やマーケティングを担当しているケースもありますね。

吉岡 一般に、「女性が働きやすい環境」という場合には、大きく二つのケースがあります。一つは産休・育休が取りやすく、負荷が高い時期に仕事を減らしてくれたり、家庭と両立しやすい部署に配属させてくれたりするケース。もう一つは、仕事の成果をしっかり見てくれて、目標を達成すれば男女問わず評価してくれるケースです。

前者と後者のどちらがいいかは人によるところですが、後者の場合はどれくらいの時間働いたかではなく、会社が自分の成果をきちんと見てくれるかどうかが大事です。そういう意味で「編集者」という職種は成果が可視化しやすいし、女性に向いていると思います。会社勤めではなくフリーでもやっていけるという点でも、働き続けるにはいい仕事だと考えています。

どうなっている? Web媒体の未来

田坂 最後の質問です。「10年後、Web媒体はどうなっていると思いますか?」。

吉岡 私は、記事やコンテンツを世に出すという編集者の仕事自体は変わらないと思いますが、読まれ方が変わっていくだろうなと予想しています。モバイルの人気はもう止められなくて、パソコンからではなく、個人それぞれの都合でスマートフォンから読むという流れが続くと思います。最近はAIがニュース記事を書くという話もありますし、フェイクニュースかどうかを判定するというような形でもAIの技術は使われていくんじゃないかなと。

万井 Web媒体はどんどん増えていて、本当に多種多様な媒体が登場していますよね。今ある媒体が10年先も存在するかというとそれは分かりません。でも、ほぼ日さん(ほぼ日刊イトイ新聞)やデイリーポータルZさんのように、10年以上続いているWeb媒体もあります。Web媒体そのものは何かしらの形をとりながらずっと続いていくのだろうと、結構楽観的に考えています。

田坂 読む人の価値観は、時代の流れに沿って変わっていくかもしれませんよね。Web媒体のコンセプトも、その価値観に沿って変化していくべきだと思いますか?

津田 「これしかやらない」と突っぱねるのではなく、お客さんに楽しんでもらうために「柔軟に変化していく」のが大事だと思います。「北欧、暮らしの道具店」は北欧のヴィンテージ食器の販売からスタートしましたが、今では日本や世界各国の雑貨、アパレルも取り扱っています。「暮らしが好き」という軸は大事にしつつ、他は時代に合わせて変わっていくものなのかもしれないですね。

吉岡 読者の価値観に沿った変化というより、「見せ方」の変化には柔軟に対応していくべきだと思います。それがVRなのか動画なのか、10年後に何がトレンドになるかは分かりませんが……。さっきの新しいサービスを使ってみるという話にも通じますが、ユーザーの視点を意識して新しいものをどんどん試してみるのが大事です。

津田 そういう意味では、当社はどんどん「伝え方」を変えています。例えばInstagramは、青木の後押しもあり、他の企業があまりやっていない時期から始めていました。継続してやってきたおかげで、今では50万超のフォロワーがいます。

田坂 とりあえず挑戦する、ということなんですね。

津田 はい。それも結構早めの段階で、できる範囲から始めてみる、というのを意識しています。動画を撮り始めた時は、まずはデジタル一眼レフカメラの動画モードから始めて。やれる範囲で工夫しています。

吉岡 こういうのって、スモールスタートが大事なんですよね。あとは、新しい取り組みを理解して後押ししてくれる青木さんが素晴らしいと思いました。現場はやる気があっても上層部が分かってくれない、ということも多々ありますからね。

田坂 ユーザーの視点に立ってまずはやってみる、というのはすごく大事ですね。本日はありがとうございました。

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「編む庭」第2回のレポートをお届けしました。イベントは今後も開催予定です。興味のある方はぜひお越しください!

はてなでは、編集職およびオウンドメディア編集長を募集しています。

hatenacorp.jp

*1:2015年3月31日終了。同年4月1日から「ITmedia ビジネスオンライン」に

改行のはなし

ネットの編集・ライティング界隈に人知れず一匹の妖怪が棲み着いている。それこそが「改段落なき改行」。すなわち文章の途中であっても任意の句読点で(あるいは句読点すらなくても)行を改める表記のことである。

これはほんとうに些細で日常的な、なんのこともなく見過ごされがちな文章の書き方であるとともに、見過ごしたにしても何らかしらの問題に発展するともおもえない、平たくいうならひとつのbr要素にすぎないのだが、正面から向き合おうとするとなかなかにやっかいな側面を持っているのである、という持って回ったような大仰な話をこれからしようとおもいます。

こんにちは。はてな編集部のid:mohritarohです。最近はセブン-イレブンの「黒糖まん」がお気に入りで、駅前のコンビニに立ち寄るたびについ買ってしまいます。という書き出しを用意していましたが、本稿の執筆から公開までの間にメニューから消えてしまいました……。

……なんの話でしたっけ? あ、そうですね。改行です。

お台場(写真は原稿と関係ありません)

トラディショナルな文章の世界における改行の扱い

改行というのは、文章をこのように書いているときに、長々とずらずら書き連ねてしまうと読み辛いので(→改行が少なくて読みづらい文章の悪例、適当なところで行を改めて、行間を空けたり字下げなどを行って、新たな気持ちで文章を読ませるギミックです。

ただし、伝統的な紙の書籍の世界では、というより一般的に商用に流通しうる、あるいは学習・研究の成果等として発表される、つまりざっくり言うなら「ちゃんとした」文章においては、どこでも勝手気ままに改行をしてよいというものではありません。これはあくまで(暗黙の)ルールですが、改行は段落を改めるときにのみ行うことが原則です。

もちろん例外があり、会話であったり、引用、詩歌などが掲載されるときに、段落といえる意味のかたまりの途中であっても改行することがありますが、基本的には複数の文を連ねてある程度の長さになり、前後の文のかたまりと区別できるひとつのまとまり、つまり文章の量と意味の両面から適切な切れ目だろうというところで「改行」を行い、「段落」を分けることが文章術の基本とされています。

ただし、このルールはおもに「どこで改行するか」についてのもので、「どこで改行しないか」はあまり意識されていません。例えば、多くのニュース系メディアで表記の拠り所とされている共同通信社の「記者ハンドブック」では、改行について冒頭の「記事の書き方」で次のように記述している程度です(第13版、9ページ、【文章について】より)

3 記事はなるべく10行以内で改行し、やむを得ないときも15行を超えないようにする。文意により2、3行で改行してもよい*1。(中略)

5 かぎかっこなどの中の文章は改行しない。(後略)

このように、長すぎないように「改行して(段落を改めて)ください」というルールはあっても、意味のまとまりでもないのに「改行しないでください」ということや、文章のどこでどのように改行「しないか」については、(かぎかっこの中などの特別な場合を除き)わざわざ説明されないものなのです。

この意識の向き方は、意外に重要なことなのかもしれません。

なお、学校教育ではそういった改行ひとつを形式段落と呼び、複数の形式段落によるまとまりを意味段落ということもあるようですが*2、これからまさに形式段落ならぬ「形式改行」と言うべきものの話をしようとしています。じつに用語が面倒ですね。

好きなところで「改行」するインターネットでの会話

前節で述べたように、紙の書籍や論文などでは一般に、行末まで改行しないで書き進められ、用紙の端まできたら折り返して行頭から書きつなぎます。

ところが最近では、大学でICT教育の一環として(Microsoft Wordのような)文章作成ソフトウェアで学期末の「レポート」を書かせると、行末まで書いたら(ソフトウェアの機能として)自動で折り返されるにもかかわらず、適当な句読点の位置で自分で「改行」を入れる学生がかなりおり、わざわざ「改行しないでください」と指導しなければならないという話を、大学教育にかかわる知人から聞いたことがあります。

そんなラフな体裁のレポートを提出できるのもすごいなあ、というな印象があるのですが、そういった感想は、紙ベースのちゃんとした文章にたくさん慣れている世代だからこそ持つのであって、学生の方々にとっては自由に改行した自由な体裁の文章により親しんでいて、そういう文章の書き方を自然としているにすぎないということなのかもしれません。

これは学生に限ったことではなく、いまや私たちが日頃から接している執筆環境、つまりインターネットのチャットや掲示板、SNSやメッセンジャーでのやりとりにおいては、おもいつくままに書き、おもいつくままに区切って、1行あるいはもっと短い言葉の固まりを「投稿」しています。わざわざ長文のテキストを書いておきながら、Twitterの文字制限にあわせて分割して「連投」する人さえいます。

このとき「段落」という意味のまとまりを意識することはあまりありません。むしろ、こういった言葉がほとんど「会話」であることを考えるなら、書き言葉の世界に「話し言葉」が混ざってきているとも言えるでしょう。改行には意味があるというこれまでの常識を離れ、日本語の書き方を「話し方」として身に付ける、新しい文言一致が起きているのかもしれません。

ここで、同じように次の行に進むものながら「改行」と「折り返し」を区別していることにご留意ください。本稿においては、ひとが「ここで行を改めたほうがよさそう」と自分の判断において次の行に進むことが「改行」であり、用紙サイズやWebページの表示領域などの外部的な制約によって次の行に送られてしまうことを「折り返し」とします。

ネットにおける文章のリテラシーはデバイスの制約をうける

先ほど紹介した、レポートの途中で自由に改行を入れる話に、最近の学生は「リテラシーがない……」と嘆かれた方もいるでしょう。

一方で、電子メールをやりとりする際に、段落中に改行をまったく入れず、アプリの折り返し設定にまかせたメールが届いたなら、これまた「リテラシーがない……」と嘆かれるのではないでしょうか。電子メールでは一般に、ページの幅いっぱいに文字を書き連ねるのではなく、適度に改行を入れることがマナーとされています*3

同じように文章の途中で改行を入れる動作でありながら、文書作成ソフトにおいては入力領域の幅いっぱいに使うことがリテラシーであり、メール作成ソフトにおいては入力領域の幅いっぱいになる前に改行を入れることがリテラシーである、という分裂的な状況はいったいなぜ起きるのでしょうか?

考えられるのは、文書作成ソフトでは適度にレイアウトを行ってくれますが、電子メールはいわゆるプレーンテキストにより近く、レイアウトの面においてデバイスの制約をそのまま受けてしまうことです。表示領域の折り返しに従っていては、文字がビッシリと敷き詰められた、たいへん読みづらい文面になってしまいます。

かつてコンピューターの画面といえば、いまのようなグラフィカルなインターフェースはなく、アスキー文字を1行に80文字、それを20数行表示できる固定サイズのターミナルが一般的でした。文字サイズも行間も調整できず、画面に文字が表示されるというだけで革命的であった時代、読みやすさをうんぬんすることは贅沢だったはずです。

その制限が、グラフィカルなインターフェースにおいてもそのまま古典的な表示として受け継がれた面は否めないでしょう。いまでも、テキストやメールをただ書くだけのエディターでは適度な横幅や行間が初期状態で設定されておらず、端から端まで埋めていくと文字ばかりで辟易することがままあります。

そういった「ターミナルの限界」から、メールの書面を適切にレイアウトしなければならないという必要があり、改行を入れるマナーになっていったのではないかとおもいます。

また、相手のメールを引用して返信する際にも、適度に改行されていなければ引用記号がうまく表示されず、たいへん扱いづらいといった事情もあります。

HTMLでいうblockquoteなどがサポートされれば、適切に字下げして表現できるはずですが、1970年代からの伝統にのっとって、電子メールでは基本的にはプレーンテキストを扱う文化で発展してきました。そういうコンピューティング環境の未熟さが、本来なら不要な改行を強いる要因となったのでしょう。

もうひとつ、古典的なターミナル環境と並んで、(日本の)ひとが文章を書くふるまいを規定してしまったものとしていわゆるガラケー、つまり1999年に開始されたiモードによって始まった携帯メールや、携帯電話端末でのWebブラウジングの普及もあるのではないかと考えられます。

とくに、著名人・有名人ブログなどで顕著に見られる、文章を短く改行して、さらに行間を何行も開けるような書き方は、ガラケーでのWebブラウジングを前提として書かれたものではないかと想像するのですが、実際のところどうなのかは有名人ブログについてより造詣が深い方の意見を伺いたいところです。

また、コンピューターゲームのメッセージ、とくにロールプレイングゲームなどで、ある程度の長い文章を低解像度の画面で読ませるために生み出された工夫が、それを楽しんだ世代に与えた影響も、ひょっとするとあるのかもしれません。

2つに分離した「改行」と忘れ去られる「段落」の意義

とはいえ、ひとの執筆環境がデジタルデバイスに移行し、ワードプロセッサやテキストエディターを利用するようになり、いきなり改行の「常識」が変化したわけではないでしょう。チャット、掲示板、メッセンジャー、SNSなど、文章で「会話」して「好きなところで改行する」ことが徐々に増えるにつれ、テキストエリアでの「改行」が2つに完全に分裂することになりました。

つまり、旧来的な「意味の区切り」としての改行(=段落を改めること)と、本稿で取り上げているような主にレイアウト的な目的によって「自分が好きなところ」で入れられる改行です。HTMLについて知っているなら、なるほどp要素とbr要素のことだな、と思うかもしれません。

ただし、ここで考えておきたいことは、旧来的な紙の世界ではpこそが改行であり、brによって改行することは特別なレイアウトだったということです。

しかし、いまやネットの世界ではbrによるものが改行であり、pは普段ほとんど意識されないものになっています。むしろ、改行とは別のものとして「改段(改段落)」と呼ばれるようにすらなっています(この用語で検索すると、改行と改段の使い分けのノウハウや「ビジネスマナー」を紹介したライフハック系のサイトやブログがたくさん見つかり、市民権を得ていることがうかがえます)

携帯電話が普及したあとの「固定電話」や、スマートフォン普及後の「ガラケー」と同じようなレトロニムとも言えますが、面倒なことに「改段」は出版ですでに使われている用語です(段組みのレイアウトで段を改めることを指します)

そこで本稿では、先ほど少しふれた「形式改行」という用語で段落中の任意のbr改行を表し、従来のp改行を「段落改行」と呼ぶことにします。改行と「折り返し」を区別するとも書きましたから、まとめると次の3つになります。

用語 説明
形式改行 段落中の任意の位置で、主に読みやすさを考慮して書き手が入れる改行。
段落改行 段落の区切りでの改行。従来の文章でふつうに「改行」と呼ばれていたもの。
折り返し 書き手の意思と関係なく、紙幅やページサイズの限界によって起きるもの。

インターネットで文章を書く機会が増えたいま、旧来の「折り返し+段落改行」の原則に沿った文章を書くことが減り、形式改行ばかりでテキストを書くようになっています。旧来の原則が原則として成り立たず、旧来の常識は(ちゃんとした書籍の世界というサークルに閉じた)少数派になりつつあるのかもしれません。

ポエム化する日本語

ここまで日本語の「ちゃんとした」文章は用紙や表示領域の端で「折り返す」ほかには、段落を改めるまで改行しないものだという前提で書いてきました。しかし、日本語のちゃんとした文章であって、行末に達していないにもかかわらず頻繁に改行する文章があります。それは(ポエム)です。

そういう意味で、インターネットに流れている言葉のほとんどは形式的にポエムだといえるでしょう。2ちゃんねるのコピペ、ツイートまとめ、細切れに改行される有名人ブログ、はてな匿名ダイアリー。そういったテキストをすべて、散文詩だとみなすことができます。

興味があれば「縦書きツール」などで縦書きにしてみてください。ふだんとは違った味わいがあり、エントリーによってはまったくの「詩」となっていることに驚かされるでしょう。

私たちは段落の途中で形式改行するとき、そこに感情の変化を織り込んでいるのではないでしょうか。つまり、形式改行とは、情感に訴えるためのテクニックであり、むしろ形式などではなく本来的な意味においてポエムなのではないかと思えるのです。

そうであれば、これを読者の心を動かす記法として、積極的に利用していくことも可能でしょう。具体的に例示するなら「ほぼ日刊イトイ新聞」において、おそらくそういった効果が働いているのではないかとおもいます。

ほぼ日刊イトイ新聞1101.com

このサイトでは、たいへんに真面目な話、シリアスなインタビューであっても、適度に明示的な形式改行をいれた短文を、ゆったりとした行間で読ませています。これは、文書の内容、書かれている意味を理解してもらいたいだけでなく、対話がなされている場の雰囲気や、そこにおける参加者の気分まで共有させたいという姿勢の表れではないかとおもうのです。

糸井重里さんは、自身のツイートなどネットで発表した文章をまとめた書籍をいくつか出されていますが、先に書いた「形式改行の縦書き」でほとんどの文章が構成されており、書籍全体としてエッセイや警句集というより、詩集のような雰囲気があるのです。

こういった試みを見たときに、形式改行の存在をただ段落と改行の混乱というネガティブな側面ばかりでなく、ネット時代の新しい表現技法のひとつであると捉えることもできるということに改めて気付かされるのです。

ネットの編集者として改行にどのように取り組むべきか

形式改行を一種の文体として積極的に活用することは新しいことではなく、Webの黎明期からあります。例えば、1995年に開設された「貞奴」などが最初期のサイトに挙げられるでしょう*4

貞奴sadayacco.com

また、いわゆる「テキストサイト」と呼ばれたサイト群でも、フォントのサイズや色を変更し、読ませ方やレイアウトまで工夫したエントリーが書かれており、現在でもその影響を受けたサイトやライターの方々によって、形式改行と画像を組み合わせ、行間を利用した表現が試みられています。

一方で、あくまで旧然とした段落改行と折り返しの原則に従い、さらには段落間もマージンではなく字下げで整えるスタイルで文章を書いているサイトもあります。

つまり、インターネットにおいて人にどう読まれるかを意識するのであれば、形式改行を積極的に利用するにせよ、排除するにせよ、その表示に対してより自覚的にならざるを得ず、レイアウトまでも含めた文章の「空間を編集する」ことが、現代のWeb編集者には求められているのです。

とはいえ、執筆いただいた原稿に形式改行と段落改行が無意識に混在されていたり、PCで読みやすかった形式改行がスマートフォンではかえって読みづらくなったりするとき、何をどこまで修正すればよいのか? にただ悩むということもよくあります。

はてなでは、改行や行間への新しいアプローチをともに模索し、Web編集における知見を共有したい編集者を募集しています。

hatenacorp.jp

おまけ

本稿では「改行」のWebにおける現状を簡単にまとめてみましたが、そもそも「文章を読みやすくするために改行する」という作法はいつごろから始まったものなのでしょう?

例えば江戸時代に書かれた絵巻の画像などを見ると、(段落の切れ目を意味する)改行も句読点も見当たらないまま書かれており、これらは濁音の記号などとともに現代的な近代になって使用されるようになった表記の技術ではないかということがうかがえます。

与謝蕪村の筆による「奥の細道画巻」(出典 Wikimedia Commons

また、手書きの張り紙などでも紙幅いっぱいではなく形式改行したものを見かけますが、なんとなく増えているようなきがするのですが、実際にはどうなのかなども気になってるところです。こういった改行文化について詳しくご存知の方がいればぜひお教えください。

なお、余談ながら、それについて参考書がないものかとAmazonで「改行」を含む書籍を検索してみたところ「開業」の本がたくさん並び、世間のみなさんは文章よりも事業のほうに興味があるというごく当たり前の知見が得られました。そんなこんなですが参考文献をいくつか挙げて終わりたいとおもいます。最後までお読みいただきありがとうございました。

たのしい編集 本づくりの基礎技術─編集、DTP、校正、装幀

たのしい編集 本づくりの基礎技術─編集、DTP、校正、装幀

  • 作者: 和田文夫,大西美穂
  • 出版社/メーカー: ガイア・オペレーションズ
  • 発売日: 2014/01/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る

東京の編集

東京の編集

※本稿は執筆者の要請により、いわゆる表記の統一を行っておりません。ご了承ください。

*1:この直前の項目で1行11字組みを原則とされているので、通常は110文字、多くて165文字で1段落となります。これがTwitterのツイートの制限に近い文字数なのは、おもしろい偶然です。

*2:http://www.t-gungun.net/shiryoshitsu/youten/kokugo1/16.html などを参照

*3:http://shuchi.php.co.jp/the21/detail/2490 などを参照

*4:書籍『教科書には載らない日本のインターネットの歴史教科書』では、日記サイトからテキストサイトへの転換点となったサイトとして紹介されています(114ページ)。

編集者のためのイベント「編む庭」第2回を開催します 〜「編む」を仕事にする〜

編集者の「はたらきかた」を知りたい

編集者のためのイベント「編む庭」を、また、開催します。

第2回となる今回のテーマは「『編む』を仕事にする」です。「編集者」として働いているゲストをお招きし、この職業を選んだきっかけからはじまり、楽しかったことや苦労したこと、どうやって成長してきたかなど、さまざまなことをお話しいただきます。

そして今回のイベントは、応募者からの疑問、質問、お悩みをもとに話をすすめていく座談会となります。ラジオの「お悩み相談コーナー」が、イメージに近いでしょうか。参加を希望される方はぜひ、応募フォームに「出演者に聞いてみたい」ことをご記入ください。

開催日は2017年1月25日(水)です。詳細は、下記の「イベントについて」をご覧ください。

2016年12月26日追記:お申込み受付は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。

出演者のプロフィール

Q1:今している「編集」の仕事
Q2:あなたにとって「編集」とは

■吉岡綾乃さん(PRESIDENT Online プロデューサー)

東京・秋葉原生まれ。大学&大学院でイスラーム史を専攻。
就職活動に苦戦、出版社・新聞社の中で唯一受かったソフトバンクに入社する。希望通り出版事業部に配属され「DOS/V magazine」編集部で6年間編集者として働く。
パソコン雑誌が売れなくなっていくのをどうしたらいいのか分からないまま、ソフトバンクグループでオンラインメディアを専門とするアイティメディアに転籍。「ITmedia Mobile」編集部で記者職の基礎を学び、携帯電話関連の記事を書く。
その後「ITmediaビジネスモバイル」「Business Media 誠」を立ち上げ、クローズまでの8年間、編集長を務める。数か月「ねとらぼ」編集部に所属したのち、プレジデント社に転職。
「PRESIDENT Online」と「PRESIDENT WOMAN Online」の副編集長を1年、現在は「PRESIDENT Online」のプロデューサー。

  • A1: 「PRESIDENT Online」に掲載する記事を制作しています。メインは編集仕事ですが、たまに自分で記事を書くことも。ただ、紙の雑誌がメインの会社なので、オンラインメディアをどうマネタイズするかというところを求められており、一般に「編集」と聞いて想像するのとはだいぶ違う仕事もしています(オンラインメディアの編集長の仕事ではあるのですが)
  • A2:読者が知りたいこと、読みたいことに先回りして気付き、できるだけ分かりやすい形でパッケージングすること。編集者は昔は黒子でしたが、最近は変わってきたのかなと思っています。


■津田さん(株式会社クラシコム エディトリアルグループ マネジャー)

1984年、東京生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業。
外資系コンサルティング会社に6年勤めたのち、2013年に「北欧、暮らしの道具店」を運営する株式会社クラシコムに転職。
現在は編集チームのマネジャーとして、記事の企画・取材・執筆・チェックやSNS運用を担当。

  • A1:「北欧、暮らしの道具店」の記事編成を考えています。そこから特集の企画立案、予算管理・工数管理、記事チェックなどもしています。
  • A2:自分が読みたいものをつくること。自分が一人目の読者になれること。


■万井綾子(株式会社はてな ディレクター/シニアエディター)

大学で図書館・情報学を専攻し、卒業後在京キー局の報道系子会社を経てITベンチャーの世界へ。
ポータルサイト運営会社、価格比較サイト運営会社で編成、編集、広報、リスティング広告など広範囲な業務を担当し、2008年7月に株式会社はてな入社。広報・マーケティング・「はてなニュース」編集長を経て、オウンドメディア編集、広告企画などに関わる。
現在はディレクター兼シニアエディター。

  • A1:はてなブログMediaで運用されている企業オウンドメディアに提供する記事の制作。広告企画の立案・実施。編集チームの取りまとめ。
  • A2:天職(以前伊藤直也さん(元はてなCTO、現一休CTO)が言ってくださった言葉で、大事にしています)。

■司会・田坂錦史郎(株式会社はてな エディター/プランナー)

1985年生まれ。
出版社やテレビ局と共同で女性系Webメディアの立ち上げを行い、コンテンツディレクターとして従事。
2016年から現職。

  • A1:オウンドメディア周辺の業務に携わっています。プランナーも兼務しています。
  • A2:なにかを、感じてもらいやすくする仕事です。

イベントについて

はてな 東京オフィス SHIBAFU
  • 日時:2017年1月25日(水)18時〜20時(17時30分開場)
  • 場所:株式会社はてな 東京オフィス SHIBAFU
  • 地図:https://goo.gl/maps/KdBz4YTEkLH2
  • 料金:無料
  • 定員:50名(応募者多数の場合は抽選とさせていただきます)
時間 内容 
  17:30      開場・受付開始   
  18:00     ごあいさつ   
  18:10     座談会   
  19:10      懇親会   
  20:00     閉場   

懇親会では、軽食と飲み物をご用意いたします。

応募フォーム

参加を希望される方は、下記のフォームに必要事項を明記いただき、お申し込みをお願いします。
応募者多数の場合は抽選となります。あらかじめご了承くださいませ。抽選となった場合の結果は、1月10日(火)ごろにはてなからメールをお送りします。

お申し込みの締め切りは、2016年12月26日(月)正午です。

お申込み受付は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。

前回の「編む庭」のレポートはこちら




はてなでは、編集職およびオウンドメディア編集長を募集しています。

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書き手の個性を生かしつつ、完読されるための工夫を 「オウンドメディアにおける編集」って?

こんにちは。2015年5月入社、はてな編集部の野瀬です。現在は企業のオウンドメディアやはてなブログの編集をしています。「はてなの編集ってどんなことをしているの?」と聞かれることが多いので、今回は「オウンドメディアにおける編集」についてお話ししたいと思います。はてなの編集に興味を持ってもらえるとうれしいです。

はてなではオウンドメディアの運営に携わっています

企業のマーケティング手法として「コンテンツマーケティング」に注目が集まる昨今、自社でブログやサイトを立ち上げて情報発信に取り組む、オウンドメディアの事例が増えています。こういった背景を受けはてなでは、はてなブログの仕組みを使ったオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」を企業向けに提供しています。

さまざまな企業に導入いただいている中、楽天さまの「それどこ」やアイデムさまの「りっすん」のように、CMSの提供だけでなくコンテンツの制作も請け負っているメディアがあります。

コンテンツ制作って何をやるの? それどこの場合

いくつかのメディアのコンテンツ制作に携わる中で、私は、はてな側の編集責任者として、楽天さまの「それどこ」をメインに担当しています。

思わず「それ、どこで見付けたの?」「それ、どこがスゴイの!?」と言いたくなるような、買い物を通じて得た知識や体験や感動、揺さぶられた物欲を共有するお買い物情報メディアとして、バラエティー豊かなコンテンツを発信しています。

「それどこ」TOPページ

「それどこ」での私の仕事は大きく分けて2つです。

  • 記事の制作
  • メディア全体の管理

前者はいち編集者としての視点で、「面白い」と思う記事を制作しています。後者は全体の進行管理や数値の振り返り、メディアの方向性やメディア全体の記事のバランスが取れているかの確認など、編集長に近い視点を持って携わっているというとイメージが湧きやすいでしょうか。

以降ではこの「それどこ」を例に、具体的な編集の仕事についてお話しします。

どんなふうに記事を制作しているのか

一つの記事が出来上がるまでの工程は、以下の通りです。

  1. はてな編集部で企画会議を実施
  2. 楽天さまと実際に進める企画を決定
  3. 書き手(はてなブロガーやライター)に打診
  4. 原稿を編集
  5. 記事公開
  6. 公開した記事の振り返り

企画会議では、各編集者が「記事の企画案」「書き手の候補」「想定する読者層と読後感」「目標数値(PVやSNSでのシェア数)」を持ち寄ります。そして、そこで出た案をもとに、楽天さまと相談して進行する企画を決定。記事を公開した後も「目標の読後感や数値と結果に乖離(かいり)がないか」「良かった点」「改善点」を振り返り、それを楽天さまと共有して今後の施策に生かす、といったことを行っています。

はてなには魅力的な書き手がたくさん

書き手の候補には、プロのライターはもちろんのこと、はてなブロガーを挙げることもよくあります。実は、はてなの編集者は日ごろからユーザーのブログをいち読者としてよく読んでいるのです。

熱量やこだわりを感じるもの、独自の視点で書かれたもの……はてなには魅力的なブログがたくさんあります。その中から、自分が「これは!」と惚れ込んだ書き手を企画会議でプレゼンするというわけです。そのため各編集者が熱い思いを持って会議に臨みます。

はてなブロガーの魅力的な記事を発信できるのは、はてなが手がけるオウンドメディアの特徴の一つだといえます。

候補が決まったら、書き手にメールで執筆のお願いをします。「書き手のどこに魅力を感じたのか」「どういった記事を書いてほしいのか」など、執筆をオファーした背景が伝わるように思いをつづります。定型文を送るのではなく、各編集者が独自のスタイルでメールを書いています。

その後、書き手と実際に会って打ち合わせをしたりメールでのやりとりを重ねて、コミュニケーションをとりながら記事を完成させます

編集するうえで心がけていること

記事を編集するとき、最も大切にしているのは「書き手の個性を生かすこと」です。もちろん、想定する読後感や企画の軸からブレないように、場合によっては記事の構成を大きく変更、調整することもあります。しかし、基本的に表現方法については書き手に委ねます。そうすることで他では読めないオリジナリティーあふれる記事が出来上がるからです。

では、私たち編集者は何をするのか?

それは、より魅力的な記事に仕上げるための“ちょっとしたお手伝い”です。読者視点に立って客観的に記事を眺め、完読されるための細かい工夫や表現の微調整を行います。

細やかな工夫を加えて記事をブラッシュアップ

例えば、ボリュームのある記事であれば「小見出しを追加して読者が記事の骨格をつかみやすいようにする」「要所で太字表現やフォントカラーの変更を加えて読者がポイントを把握できるようにする」「フォントサイズの大・小でメリハリを付けて文章の流れにリズムを作る」などして、離脱させない工夫をします。

また、シチュエーションや目的別に構成された記事や、時系列に話が進む記事では、「冒頭に目次を追加して読者が内容を選んで読めるようにする」といったことも。

会話調の記事では「間の取り方」を意識します。行間をあえて空けたり、画像とテキストの並びに試行錯誤したり……。そこまでする必要なんてないのでは、と思われる人もいるかもしれませんが、細部にまでこだわります。編集者はしつこい性格の人が多いのかもしれません(笑)。

この編集作業にはそれなりの時間を要しますが、書き手から「読みやすくなりました!」「編集してもらって良かったです」というフィードバックがあったり、読者から「面白かった」「役に立った」というコメントがあると素直にうれしいです。

メディア運営に協力すると同時に、書き手の「後押し」も

さまざまな作業を経て、書き手と一緒に作り上げた記事が世に発信されるときの喜びはひとしお。企業のメディア運営に協力すると同時に、書き手の「後押し」にもつながるオウンドメディアの編集には、非常に魅力とやりがいを感じます

こういったお仕事に興味のある方は、ぜひはてなに応募いただけるとうれしいです! ご応募お待ちしております。

はてなでは編集者を募集しています

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はてなの編集って、こんな人

こんにちは、はてなで編集兼プランナーの仕事をしている、田坂です。

僕は2016年2月からはてなにジョインしているのですが、いまだに「はてな」について、分からないことがたくさんあります。

もちろん、はてなの編集の業務や仕事については、現場で経験を積んだり、「はてなの編集は、こんなことをしています。 - はてな編集部ブログ「編む庭」」を何回も読んでいるので理解していますが、「はてなの編集者って何を考えて編集しているのか?」については、正直まだ分かっていないことが多いです。

そんな若輩者の僕が、勤務歴2年・5年・6年の先輩3人に「はてなの編集」について聞いてみました。

写真左下から時計回りで、毛利、田坂(インタビュアー)、青木、野瀬

はてなの編集は、リアルな体験が好き

——それでは早速、軽い自己紹介と「最近気になるコンテンツ」について教えてください。

青木:京都オフィスで「はてなニュース」の記事作成と「はてなブックマーク」の編成をしている青木です。元々ライターのアルバイトとして所属していて、現在は社員として編集の仕事をしています。前回記事にも書きましたが、私は舞台が好きで、今年はもう130公演観ています(10月1日時点)。今気になっているものは、舞台つながりで「PSVR」です。

野瀬:えっ! なぜ舞台でPSVR?

青木:舞台って“ナマ”のものなので、パッケージにしちゃうと面白さが半減しちゃうのが悩みだったんです。そこでPSVRの登場ですよ! 舞台をこれで観れるんです! PS4で配信されているVR用に編集されたコンテンツで舞台を観れるようになるんですよ!

社歴6年の青木。今回は京都から遠隔で参加

——なるほど(熱量がすごいな……)。では次は野瀬さん。

野瀬:はてなブログMediaで運用されているオウンドメディアのコンテンツ制作や、はてなブログの編集をしています。「それどこ(楽天さま)」では、はてな側の編集責任者として、全体の進行管理をしています。

私は最近、ラジオをよく聞いています。特に好きなのはTBSラジオの「たまむすび」。やっぱりLIVE感が半端ないのと、キャッチーな情報を拾うのはラジオやテレビが早いなぁと思っていて。世間で今、何が人気になっているのか、情報収集のツールとしてラジオはとってもいいですね。(はてなダイアリーを利用していただいている)映画評論家の町山智浩さんがコメンテーターで出演されていますよ。

——ラジオのコミュニティーはネットに近いところもあり面白いですよね! 僕もTBSラジオの「JUNK」枠を昔から好きでよく聴いています。では、最後に毛利さんお願いします。

毛利:はてなには2012年からジョインしています。現在はいち編集者として手を動かすほか、シニアエディターとしてチーム全体を見たりしています。最近は「ポケモンGO」にハマっていて、「お台場」や「錦糸町の公園」で、目当てのポケモンが出ると聞くと、何時間もさまよったりしています。もともと目的もなく無意味に歩いてるのは好きで……。

青木:無意味に? どうしてですか?

毛利:「この駅とこの駅の間は歩いて行けるのか?」って試してみたり、「あっ! この道とこの道はここで繋がってるんだ」って感動していたり。そういう街への興味が、「ポケモンGO」という意外なコンテンツと繋がったのが面白くて。ただの「街歩きおじさん」ですね(笑)。

——デジタルな体験からリアルな体験へのシフトですね。

毛利:青木さんの舞台の話にも通じるのかもしれないけど、現場に行ったほうが“シュッ”と分かることってあるじゃないですか。そういう現場感があるものっていいなぁって。

青木:日本2.5次元ミュージカル協会の会長さんが、「現代人はデジタルに触れすぎているから、“ナマ”のものに対する憧れの力がすごく強くなる」とおっしゃっていて、確かにそうだなぁと。はてなの編集部だと、何ができますかね。

毛利:制作を一部担当させてもらっている「SUUMOタウン(リクルート住まいカンパニーさま)」あたり、そうかもしれませんね。ブロガーさんやライターさんが、暮らした街やゆかりのある街について、自分のリアルな体験をもとにした寄稿をしてもらっている。

ネットで拾ったものをネットに戻すっていう「バイラル」な手法もいいけど、実際に人が動いて得た何かをネットに出して、それを見た人が動いて、ぐるっとまたネットに戻ってくる。この循環がぐるぐる回っていくと面白いですよね。

野瀬:最近は「それどこ」でも、取材記事が増えています! 実際行ってみないと分からないことってすごくあるし、記事に厚みが出ますね。

社歴2年の野瀬。「それどこ」の編集責任者

紙とWebの編集の違いって?

——もともと野瀬さんと毛利さんは、紙の編集をされていたんですよね。

野瀬:私は情報誌のWeb媒体を担当していたんですが、人手が足りないときは紙の方も手伝っていました。

毛利:僕は、14年ほど出版社で実用書の編集をしていました。

——紙とWebで、編集に違いってありますか?

毛利:本は何万字の塊として情報を提供するまとまった単位の読み物ですが、Webは1記事単位なので、せいぜい数千文字です。その限られた中でいかに十分な魅力を伝えるかに注力することがWebの編集なのかもしれないですね。

——連続している世界で読ませることと、分断されている世界で読ませることの差、でしょうか?

毛利:なんかこう、寿司職人みたいですよね。

——え? 寿司……?

毛利:たまたま記事を目にしてくれたひとに、その1記事で満足してもらいたい。ちゃんとしたコース料理じゃなくてファストフードなんだけど、そこに「満足してもらう技」みたいなものがあって……。寿司とか蕎麦とか……。

——ちょっと何言ってるかわかんないです。

野瀬青木:(笑)

社歴5年の毛利。回ってない寿司や立たなくていい蕎麦は久しく食べてない

編集する上で大切にしている事と「はてなっぽさ」って?

——では皆さん、編集する上で「大切」にしていることってありますか。

野瀬:オウンドメディアの編集では、ブロガーさんの特徴や色を生かしたまま編集しています。

毛利:一方で、商業メディアでの執筆経験がない方もいらっしゃるので、ひとりでも多くの人に読まれるには、どこまで手を入れるのがベストなのかを考えています。僕は実用書をやっていたから、伝わりやすさ優先でけっこう手を入れがちなんですよ。ブロガーさんの寄稿もその調子で編集しすぎちゃう傾向があって、良くないなと思ってます。

野瀬:客観的に見て、意味が分からないってならないように言葉を補ったり、見せ方を工夫したり、写真やリンクをどの位置に入れようか考えたり。読者が完読するために、どうしたらもっと良くなるかの「お手伝い」が「編集」という仕事だと思います。

青木:私は、はてな独自の感覚を大切にしています。はてなの編集者には「はてなっぽい」っていう言語化できない共通認識があると思いますね。

——「はてなっぽい」という言葉は、僕はいまだにつかめません。はてなには、読者との距離が近い環境があるから、顔の見えるユーザーへ的確にコンテンツを提供できるということですかね?

毛利:そうですね。「はてなっぽさ」は強みであると同時に、ある種のジレンマがあると思っています。僕はもともと、はてなユーザー側だったので、はてなユーザーがはてなユーザーに向けて記事を作るやり方では、ネット全体に届く記事になるのかどうか……。

——なるほど、そういう悩みもあるんですね。皆さんは、はてなと他の会社を比べて感じることなどありますか?

野瀬:私は、はてなの編集はわりと柔軟にいろいろなやり方を取り入れていると思いますね。先ほど「『はてなっぽさ』はある種のジレンマでもあるかもしれない」という話が出ましたが、それもあってか特にここ最近は自由に「それぞれが考える良い方法」を取り入れようとする姿勢があると思います。

青木:はてなニュースの場合は、例えば「煽るタイトルはつけたくないよね」というような意識は全員が持っています。煽るタイトルの方がバズるとしても、一度自分たちのスタイルを崩しまうと、これまで積み上げてきたはてなニュースの信頼性までなくなってしまいそうで。ありがたいことにとてもしっかり読んでくださるユーザーさんが多いので、浅いことは書けませんし、いつも気を引き締めています。そういう意味で、ユーザーさんにはすごく育てられましたね。

——マスというよりは、特定の人に届けているんですね。

今後のはてなでやっていきたいこと、一緒に働きたい人のこと

——最後に、皆さんが今後はてなでやってみたいことや、一緒に働きたい人について聞いてみたいです。

青木:私は、インタビュー記事がやりたいですね。はてなニュースが意識しているのは、読者に「きっかけ」をどうやって与えるのか。自分が知らない分野のプロや、職人、専門家などへのインタビューを通じて「その世界を好きになったきっかけ」を発信していきたいと思っています。

野瀬:一緒に働きたい人は、ネットに限らず「好きなものがある人」ですかね。編集者って、持っている「情熱」のようなものを記事にぶつけるところがあるじゃないですか。そういう感覚って何かしら「好きなもの」がないと養えないかなと。編集以外のはてなスタッフも、ネットに限らずいろんなことやものが「好き」で、それを自由に楽しんでいる方が多いですね。

私も最初はなじめるかビビってたんですが、人に強要せず、それぞれの個性を活かす文化があるので、今では楽しくやっております(笑)。気軽にエントリーしてもらえるとうれしいです!

毛利:はてなという会社には「エンジニアリング」と「コミュニティー」という2本の柱があって、そこに「メディア」の力が加わると面白いということは、社内でも社外でもずっと言われてると思うんです。すでにブログやブックマークなどで情報発信しているユーザーもたくさんいて、ポテンシャルもコンテンツもあって読者もいるところで、メディアの形づくりを一緒にやっていける人が来てくれたらうれしいですね。

◆◆

この後も話は続き学生時代の話や就活の話など、いろいろ話をしました。同じような経歴の人はびっくりするくらい、いませんでした。皆バラバラです。

はてなの編集ってこんな人! と結論めいたことは分かりませんでしたが、今考えていることや、向いている方角は不思議と似ていました。はてなの編集は多様な感受性で世の中の今を見つめながら、多様な読者へ熱量を届けることが好きなようです。

そんな我々とリアルとデジタルを行き来しながら一緒にメディアを作っていきませんか?

はてなでは編集者を募集しています

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好きなことを仕事にするということ はてなニュースの最近の取り組み

こんにちは! はてな編集部の青木です。2015年に入社して以来、はてなニュースはてなブックマークの編集業務を担当しています。

前回は飯塚がはてなブックマークの「特集」についてご紹介したので、今回ははてなニュースで私が最近取り組んでいることをお話ししようと思います。

はてなニュースは、ネット上で話題になっていること、これから話題になりそうなことを中心に取り上げるはてな初のWebメディアとして2009年に始まりました。当初は「はてなブックマークで注目されていることを外へ発信していく」という目的もあったので、2014年までは「はてなブックマークニュース」という名称で運営していました。

オープンから7年目を迎えた現在は、3代目編集長・飯塚のもと、はてな本社がある京都のニュース編集部から日々記事をお届けしています。

はてなニュースでは、基本的に「ネットで注目されていること」「これから話題になりそうなこと」を記事にしていますが、近ごろは「編集者が気になっていること」を紹介する機会も徐々に増えてきました。編集者それぞれが「これが好き!!!!!」と思ったコンテンツをどんどん出しています。

「そんなに好きなんだったら、仕事にすればいいんじゃない?」

最近のはてなニュースでは、これまであまりなかったエンターテインメント系の記事、特に舞台にまつわる記事がじわじわと増えています。実はこれこそ、私が今最も「好き!!!!!!!!!!!!」と叫びたいコンテンツの一つ。この良さをもっと多くの人に知っていただきたい! と心から推しているジャンルなんです。

はてなニュース「カルチャー」カテゴリ

はてなニュース「カルチャー」カテゴリから。最近は舞台にまつわる記事が充実しています

今から約3年前に初めて劇場でテニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)を見て、一瞬にして心臓のど真ん中を撃ち抜かれてしまって以来(語りだすと1日中かかってしまうので、ここから3年間の歩みは端折らせていただきます)すっかり舞台のとりこになってしまった私。周りの編集スタッフにも常々「2.5次元ってすごい、びっくりするくらい面白い……舞台は最高……」と語り続け、いつの間にか年間の観劇回数が年間の休日日数(およそ120日)を超えるほどどっぷりとはまっていく日々……。

そんなある日、毎日のように普及活動に勤しむ私を見た上司が「そんなに好きなんだったら、仕事にすればいいんじゃない?」とアドバイスをくれました。目の前がパッと晴れたような瞬間が訪れました。好きなことを仕事にできるかもしれない?

最初は好きすぎるがゆえに仕事として触れてはいけないのでは……という謎めいたためらいもあったのですが、ネット上の話題を取り上げるだけでなく、編集者の得意とする分野を掘り下げていくことは、これからのはてなニュースの強みになるのかもしれないと思いました。

そして勢いに乗るまま制作会社にメールを送った結果、公演やゲネプロ(関係者・マスコミ向けに公開される本番前の通し稽古)取材の案内をいただくようになり、仕事としても“現場”に足を運ぶようになったのです。

“まだ知らない人”にこの熱量を届けたい

これまでのはてなニュースはこうしたエンタメ現場と縁遠いメディアだったので、とにかく目に入るものすべてが新鮮でした。慣れない場所に飛び込んでいくのは勇気がいりましたが、それでも「この魅力を、たくさんの人に届けたい」という思いの方が勝っていました。同時に、見る人を熱狂させる制作の裏側をのぞけること、自分がその場に仕事として参加できていることに心が震えました。

取材の際に記者が身に着けるプレスパス

取材の際に記者が身に着けるプレスパス。自席にある照明よけに飾っています

ゲネプロに限らず、撮影が可能な現場ではライターとカメラマンに分かれて参加するというメディアが多い中、はてなニュースでは取材・執筆・撮影のすべてを私1人で担当しています(写真のレタッチは弊社デザイナーにお願いしています)。

写真は多いときだと1公演につき2,000枚以上撮っているのですが、ほとんどの場合、記事に載せられるのは5〜10枚程度。さらに、写真を撮っているとステージを直視することが難しく、取材中はほぼファインダー越しでしか公演を見たことがありません……。

しかし、きちんと公演を見て、読者に伝えることこそ大事な「仕事」。最初は手探りでしたが、プライペートでよく舞台を見ているということもあり、次第に見どころや、ここを押さえるとより伝わりやすいだろうというポイントがつかめるようになってきました。

記事を書くときに心掛けているのは、なるべく舞台について知らない人にも響くように、ということです。ファンの方たちに届けたいという思いももちろんありますが、「好き」なこととはいえ、名刺を持って赴いている以上、私が取り組んでいるのは「仕事」です。はてなニュースの編集ライターとして、なぜこれが盛り上がっているのか、どう面白いのかをまだ知らない人に伝えたいという思いが強くあります。

「好き」で身に付けた自分自身の感覚と、「仕事」で培った編集者としてのスキルを組み合わせて、舞台の面白さと熱をより広げていければと考えています。

これからも「好き」を生み出すきっかけを

舞台取材を始めたころは不安もありましたが、想像以上に多くの方が読んでくださり、感想もたくさんいただけて本当に嬉しく思っています。

記事への反応を見ていると、「これってこの人が演出だったの?」「音楽担当ってこの人だったんだ!」など、意外なクリエイターが携わっていることに驚かれる方も多いようです。こうした“意外さ”から舞台に触れる読者の方を見ていると、「まだ知らない人に向けて知ってもらうきっかけを作りたい」という私自身の目標も達成できつつあると感じます。

「はてなニュースの舞台記事は熱い」というコメントを見たときは胸がいっぱいになりました。舞台ファンの方にもTwitterなどで「いい記事」と言及していただけるとほっとします。やはりファンの方に喜んでもらえるのも、とても嬉しいです。

好きなことを仕事にしていると、とてもシンプルですが、毎日が楽しいです! どんな挑戦をしていこうかと考えることそのものにわくわくします。舞台制作の裏側は、想像していたよりもずっと情熱的です。その裏側に触れている編集ライターとして、コンテンツが生まれていく過程をできるだけ分かりやすく読者の皆さんにお伝えしていきたいと考えています。これからは舞台のみならず、面白い世界をどんどんのぞいていけたらと思っています。

私が以前書いた記事のはてなブックマークのコメント欄に「知らなかったけど、読んだら好きになってしまった」という感想がありました。もう数年前のことですが、誰かの「好き」を生み出すきっかけを作ることができたのだと、自分の仕事に初めてやりがいを感じた瞬間でした。

まだまだ未熟な部分もあり悔しい思いをすることもありますが、こうしたコメントを読んでいると、よし、頑張るぞ! とまた前を向くことができます。

はてな編集部はもちろんですが、はてなという会社には「好きなことを好きだと表現する人を応援していこう」という土壌があると思っています。これは社員だけでなく、サービスを利用していただいているユーザーの皆さんに対してもそうです。

好きなことがもっと好きになれるきっかけ、これから好きになれそうなことが見つかるきっかけを、はてなニュースでは今後もお届けしていきたいと考えています。


はてなでは編集者を募集しています

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はてなブックマークの編集は何をしている? 「特集」の編成について

こんにちは、はてな編集部の飯塚です。2011年に入社し、主にはてなニュースはてなブックマークに関する編集業務を担当しています。

取材や記事執筆などのイメージがしやすい“はてなニュースの編集”に比べて、“はてなブックマークの編集”というと「一体何をしているの?」と思われる方が多いかもしれません。今回は、はてなブックマークの編集業務の一つ「特集」の編成についてお話ししたいと思います。

はてなブックマークの「特集」とは?

特集は、はてなブックマークの「世の中」「暮らし」「テクノロジー」といった各カテゴリをさらに細かいテーマに分けてチェックできる機能です。ユーザーさんのブックマーク活動・はてなの編集・はてなのエンジニアリングの3つによる新しい取り組みとして、2015年8月にスタートしました。はてなブックマークのアルゴリズムで抽出されたデータをもとに、より特集のテーマにマッチした情報を届けられるよう、編集スタッフが中心になって編成しています。

「暮らし」カテゴリの特集

「暮らし」カテゴリの特集

新しいはてなブックマークで何ができる? Vol.1「特集」 - はてなブックマーク開発ブログ

特集の目的は、はてなブックマークに集まっている有益な情報をテーマごとに分け、興味のある情報をより見つけやすい形でユーザーさんに提供していくことです。また「はてなブックマークにこんな話題もあったんだ!」と感じていただけるような、新しい発見につながることも期待しています。

編集スタッフが特集のテーマを決める際には、次のようなポイントを重視しています。

  • はてなブックマークで多くのエントリーがブックマークされているテーマ
  • 季節やトレンドに合ったテーマ
  • 1年を通して定番のテーマ
  • はてなブックマークやはてなブログで盛り上がっている話題など、はてなならではのテーマ

特集として成立させるためには、そのテーマに関するエントリーがコンスタントにブックマークされている必要があります。そのような“ユーザーさんにとって関心が高いテーマ”の中から、季節やトレンドに合ったもの、定番のものをその時々でピックアップしています。

2016年8月現在で公開している特集は、全カテゴリ合計で約180個。個別の特集を楽しんでいただくのはもちろん、トップページや各カテゴリのページを見たときにも、並んでいる特集から季節やトレンドを感じていただけるようにと考えています。

こんな特集を作っています

アプリで見た「テクノロジー」カテゴリの特集

はてなブックマークには、エンジニア向けの記事や最新のWebサービス・ガジェットに関する記事など、IT系の話題が多く集まっています。「テクノロジー」は、最もたくさんの特集を抱えるカテゴリの1つ。「機械学習」「IoT」「VR」などのトレンドを押さえた特集、エンジニアの「発表資料」や「技術ブログ」だけを絞って見られる特集などがあります。

アプリで見た「アニメとゲーム」カテゴリの特集

同じくはてなブックマークで人気なのが、アニメやゲームの話題。「アニメとゲーム」カテゴリでは、一大ブームを巻き起こしている「ポケモンGO」や、“今期のアニメ情報”が分かる「2016年夏アニメ」など、その時々で旬なテーマをピックアップしています。各ジャンルの新情報だけを追える「アニメニュース」「マンガニュース」「ゲームニュース」という特集もあります。

アプリで見た「暮らし」カテゴリの特集

衣食住をはじめ日々の生活に欠かせない話題を扱う「暮らし」カテゴリにも、たくさんの特集があります。「グルメ・レシピ」「インテリア・雑貨」といった定番の特集はもちろん、季節を感じる特集が多いのも特徴。2016年8月現在は「夏休み」「ビール」「かき氷」と、夏らしいテーマを設定しています。はてなならではのテーマとして、はてなブログなどでも人気が高い「かばんの中身」、さまざまな書き手が感じたことを思いのままにつづる「それぞれの暮らし」といった特集も用意しています。

そのほかのカテゴリにも、バラエティーに富んだ特集があります。日々調整や入れ替えをしているので、ぜひ何度も訪れてみてください。

多様なテーマのエントリーがたくさんブックマークされるほど、新たな特集の可能性が広がります。膨大な数のエントリーが集まるはてなブックマークをより便利に使っていただけるよう、また新しい楽しみ方を見つけていただけるように、これからも「編集」の面で支えていきたいと思います。


※記事中で紹介している特集は、2016年8月現在公開中のものです


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