DevRel Meetup in Tokyo #5で「ブログとメディアとコンテンツの話」をしてきました

こんにちは。はてな編集部の id:mohritaroh です。普段は、はてなブログの編集をしています。

2月3日(水)に渋谷で開催された開発者コミュニティのマーケティング勉強会「DevRel Meetup in Tokyo #5」にて、はてなブログにおける編集者とコンテンツの関係について発表しました。

DevRel Meetup in Tokyo #5 - dots.

今回はこの発表から、企業向けサービスはてなブログMediaの事例を除き*1、個人のブログにおけるコンテンツの重要性について、発表資料の抜粋とともにお伝えしたいとおもいます。

はてなとブログの関係

はてなでは、2003年からブログサービス(当初は日記サービス)の「はてなダイアリー」を提供しています。今でも多くのユーザーに利用いただき、先月でリリースから14年目になりました。このように歴史と実績のあるサービスを提供していることもあり、昨年はブログのコミュニティ形成についての書籍にはてな会長の近藤が協力させていただきました。

この後継サービスである「はてなブログ」は、5年前の2011年11月にリリースされました。

2011年は東日本大震災の年であり、Webでは「ブログ」よりも短い「つぶやき」が注目されていました。震災後、さまざまな情報や言説がTwitterに流され、Webコミュニケーションのプラットフォームとして、多くの人がソーシャルメディアを利用するようになりました。

そんな中で、さほど注目される存在ではなくなっていた「ブログ」を、はてなはあえて新しく作り直したわけですが、その経緯などについて、当時のサービスディレクターである id:onishi が、リリース直前のYAPC::Asiaで発表しています。

新はてなダイアリーの裏側(発表資料)

この発表で注目したいのは「ちゃんとした文章を書き残したい」という言葉です。短文中心のソーシャルメディア全盛期だからこそ、140文字で言い足らないことがたくさんあり、長文が再評価されるべきであり、「今だからこそ、ブログを作る意味がある」。ブログが再評価された現在では慧眼といえますが、当時は冒険だったのではないでしょうか(このころ私はまだ入社前で、いちユーザーとして「今さらブログを作り直すのか」という感想を抱いていたのは事実です)

モバイルとソーシャルの時代におけるブログサービス

はてなブログは、はてなダイアリーで作り切れなかったところを念頭に開発されたサービスなので、機能面でもいろいろと違いがあります。

プランを比較 - はてなブログ

しかし、むしろ注目したいのは、置かれた時代あるいは環境の違いから来る、サービスの世界観の違いです。はてなダイアリーは2010年5月に大規模な機能追加を行っており、はてなブログはその後に開発されました。

このころ、Webの世界に2つの波が押し寄せました。1つは前述した「ソーシャルメディア」であり、もう1つは「モバイル」です。

2010年ごろ、Twitterは日本でも利用されていましたが、Facebookはまだこれから、ソーシャルシェアを最適化する技術(OGPなど)もあまり認識されていませんでした。モバイルについては、フィーチャーフォン(ガラケー)とスマートフォンの利用者が逆転したのはようやく2014年に入ってからだそうです。

そういった時代背景にあわせて開発を進めた結果、はてなブログは、よりモバイルやソーシャルに寄ったサービスとなり、次のような機能上の利点があります。

  • スマートフォン用のページとPC用のページで同じURLでアクセスできる
  • og:imageを自由に設定できるなど、ソーシャルシェアを最適化できる
  • スマートフォン用のページに、自身のアフィリエイト広告を含むブログパーツを自由に掲載できる(Proのみ)
  • レスポンシブデザインへの対応
  • 公式スマートフォンアプリ

つまり、多くの閲覧者がソーシャルメディアで拡散された記事をスマートフォンからアクセスしているとき、そこに適切な表示なり、シェアなりをしたいと考えるなら、はてなブログはより適したサービスだと言えるでしょう。

ストーリーとコンテンツの大切さ

はてなブログの時代的な特徴として「ソーシャル」と「モバイル」の2つを挙げましたが、この2つを媒介に誕生した、もう1つの時代的な特徴があります。それは「ストーリー」です。

モバイルとソーシャルの組み合わせが便利すぎて、多くの人が日常的に利用する情報プラットフォームと化したことにより、単にコミュニケーションの場所ではなく、コンテンツを消費する場所になっています。このため現在では、優れたコンテンツ、面白いストーリーが必要とされ、見直されるようになっています。

Twitterの元CEO、エヴァン・ウィリアムズ(@ev)がMediumというパブリッシングプラットフォームを立ち上げたり(2012年8月)、「人生のストーリー」を投稿するサイトSTORYS.JP(2013年2月)が話題になったりといったことも、そういった背景によるものでしょう。

はてなブログでは、リリース当初から「物語(ストーリー)」を書き残すことをキャッチフレーズとしてきました。

「書き残そう、あなたの人生の物語」

現在でも、サービスのフッターにこのキャッチフレーズを表記しています。現代のブログは、「ソーシャル」「モバイル」「ストーリー」この3つによって支えられています。

メディアは誰でも作ることができる。大切なのはコンテンツ

はてなブログでは、企業向けの「はてなブログMedia」だけでなく、個人で利用できる有料オプションでも広告の非表示や独自ドメインをサポートしており、メディアとして運用が容易にできる仕組みを整えています。他にも、さまざまなブログシステムやサービスで同様の機能が利用できます。

つまり、個人・企業を問わず、メディアを立ち上げるハードルが低くなっています。その結果、そこに掲載するコンテンツこそが、より重要になっています。読者を引き付け、ソーシャルで拡散される面白いストーリーをどのように書くか? あるいは書いてもらうか? 書き手をどのように確保するか? が新しい課題になっています。

面白い書き手、広く読まれるようなブログを見つけるには、単にソーシャルシェアやPVの数だけに注目していては不十分です。ブログを成長させるために、例えば検索流入を目的にトレンドワードについて即席で調べたまとめ記事を量産するなど、目的と手段が主客転倒してしまうことがままあるからです。

では、ブログのどこに注目するのか? それは、そのブログが本当に好きで書いているのかどうか?

ひとことで言うなら、何かの「ファンである」人にこそ注目すべきだと考えています。

その人でなければ書けない何かを持っているということ。それは知識や経験もありますが、書いている対象や書くこと自体にどれだけの「愛」があるのか? 好きなことについて書いている方、好きで好きで好きすぎて好きがあふれだすような文章を見つけたい。

いまや商業Web媒体に記事を書くハードルも下がっており、ブログの文章をお金に買えるノウハウがさまざまなブログで共有されています。しかし、それは読み手もそのノウハウを共有しているということであり、対象への愛であったり、読み手を楽しませようという気持ちがなく、お金のためだけに書かれた記事は見透かされ、読者を引き付けることは難しくなっていくでしょう。

お酒についての記事はお酒が好きなひと、双眼鏡についてなら本当に双眼鏡を必要としているひと、楽しい記事なら「楽しませる」ことが大好きなひと、それぞれ対象への「愛」があふれる書き手こそが、最終的には多くの人に愛され、記憶に残るのだろうとおもいます。

シンガーソングライター(と紹介してよいのか悩ましい経歴の方ですが)かまやつひろしさんの代表曲に「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」があります。この2番にある「何かに凝らなくてはダメだ」という一連のリリック。これこそが、現在のブロガーのあり方として重要なのではないかと考えています。

ご清聴ありがとうございました。


2月18日、はてなオフィスでイベントを開催します

以上、駆け足になってしまい、いささか消化不良もあるのではないかと心配ではありますが「DevRel Meetup in Tokyo #5」で発表した概略を紹介しました。

来る2月18日(木)には、はてな東京オフィスで当ブログと同じ「編む庭」と題した編集者向けイベントを開催します。すでに申し込みは閉め切っておりますが、当ブログにレポートがまた掲載される予定ですので、更新時にはお読みいただければ幸いです。

editor.hatenastaff.com

まだまだ始まったばかりの当ブログ。はてなという個人および企業向けWebサービスを提供する会社に、なぜ編集者がいて、どのようなことを考えているのか、私を含めて編集部一同このブログで公開していければと考えております。今後ともよろしくお願いいたします。

*1:はてなブログMediaについては、はてなビジネスブログ http://business.hatenastaff.com/ をご参照ください。